投稿者:みそじ

タイトル:M美の怪〜前編〜
家系柄昔から霊体験や怪現象に遭遇する事が多いみそじです。

今回は学生時代の話しですが、当時中学生だった私はある霊体験(※”お前の方が怖かったわ!”参照。)によりラスボスとか生悪魔とか呼ばれていました。

その件以来頻繁に心霊スポット同伴(友人だけでなく男子、女子、学年関わらずあまり顔も知らない奴までも私に同伴を求む事が学校内で予防線とされていたようです)やそれっぽい霊障相談は私に良く持ってこられました。

ちなみに当時家族と不仲で不良街道まっしぐらの私には霊に関する知識や対策方法などまともに知ってるはずもなく、ただ実家の家業が神職だった事が本人がDQNだという事すら揉み消す程相談者には神々しいかったのでしょうか(笑)

そんな相談してこられた中でも1番記憶に残っているのは同じクラスだったM美の相談でした。

M美はクラスで必ず居るタイプの目立たない存在感の薄い女の子で決してルックスが悪いわけでもなく寧ろルックス容姿だけで言えば校内でも人気がある美形型でした。ただ性格に問題ありでそれが災いして存在感を薄めていたのでしょう。

M美はとにかく天性のマイナス思考スキルを所持していて、それのせいか解りませんが極度の対人恐怖症の持ち主でした。

そんな彼女が当時の私に相談する、という行為は余程切羽詰まる状況だったんだと思います。何せ糞真面目な女の子が地元の少年課で有名なDQNに相談する訳ですから…。

で、M美の相談とは”夢に出てくる誰かが私を殺そうとしている”、その夢を何日見続けている…と。

実は結構似たような相談がありましたがM美の話しには続きがあり、その夢の中で窮地に立つ瞬間に”必ず誰かが横にいて助けてくれる”と言う内容なのです。

だったら問題無いだろ?

とツッコミをいれると、夢に出てくる私を殺そうとする奴が”日に日に近付いて来ている”…と。

夢じゃどうしようもないやん…と大概この手の相談は軽くあしらうのですが、腑に落ちない点があったのでM美に最近変わった出来事がなかったか聞いてみたが心当たりは無い…と。

現状で霊的な何かならば目の前のM美の周りに居るはずなのに私には全く感じる事も見える事も無かった…ただ何故か脳内妄想の夢には私には思えなかった。

今にして思えば、この引っ掛かりが直感だったんだと思う。



結局話しだけでは何も分からなかったがM美が家に着てほしいと言う。流石に私もこの言葉には面食らった、普段のコイツからは到底出てくる言葉ではない。

その日は悪友との約束もあり後日、放課後に家に行くと言う事で一段落した。

しかし翌日、M美は学校を休んでいた。勿論私はM美の家なぞ知らないので行く事もなかった。

翌々日もM美は学校に来なかった。

その次の日も欠席。流石に話しを聞いた翌日から姿を見せないので一抹の不安を感じたのだが、当時の私はヤンキーとして立場的な事もありM美と少しでも関わっていると周りから思われたく無かったので誰にも彼女の事を聞かなかった。

そうこうしている内に週も変わり月曜になってもM美は欠席、その日のホームルームでM美が入院した事を教師の口から知った。

(話を聞くんじゃなかった!)

本心からそう思っていた、聞かなきゃ余計な心配しなくてすんだのに。私の頭にはどうしてもあの話しとM美の入院を直結させてしまう。

私は教師にM美の入院先を問いただした。

教師は何でお前が?みたいな面食らった顔をしていたが私にはそれどころではない、M美の入院の原因は自分の思い過ごしだと自分自身確かめたかったのだ…。



その日の内に私は病院に向かっていた。

M美の病室は個室だった。

スライド式のドアを開けるとまるで私がくるのを予測していたかのようにM美がベットに座り窶れた顔で微笑んで言った。

「やっぱり来てくれた。」

(何を言うとんねんコイツは…。)

少なからず心配した自分がアホみたいに思えた。

「お前なんで入院したんや?あの話しの直後から学校来んからいらん心配してもうたやろが!」

M美は私の叱咤に少し驚いたのか泣きそうになった。少し間を開けてM美が戸惑いながら口を開いた。

「少し後ろを向いてて…。」

はっ?

とは思ったが言われるまま後ろを向いた。

「もういいよ。」

私は振り向きM美を見た。

一瞬目を疑った。

M美が上半身裸になっていた。

手で胸を隠してはいたが私も当時は思春期の中学生だ刺激が強すぎる、目のやり場に困り

「おぃ!」

と言おうとしたが寸前で言葉が詰まった。

M美の上半身に痣が沢山あったからだ。

「…お前学校の奴らにイジメられてるんか?」

M美は無言で首を横に降る。

「ほな親か?誰やねん!?」

M美はまた無言で首を横に降るだけだった。

とりあえず目のやり場に困っていたのでM美を諭し上着を来てもらった。

暫くの沈黙の後M美が話始めた。聞きたくなかったがやっぱりあの夢が原因だったのだ…。



M美が言うには日に日に夢が鮮明になっていき近付いてくる者の輪郭も顔までもが今でははっきりわかるまで達しており三日前についにソイツに掴まれたらしい。そして横に居て助けてくれる奴の輪郭も顔もわかったらしい。身体の痣もその掴まれた日から現れたらしい。

だが話を聞いたところで、まだ私には腑に落ちない点があった。

M美の夢が霊的な夢だとしてもソイツがM美に取り憑いているのなら私にも見えなくとも少なからず気配くらいは感じ取る事は出来るはずなのだが全く感じない。

M美の話しを聞き頭で整理しているうちにM美の母親が病室に入って来た。

普通、私みたいなタイプは大人からの初対面の印象は最悪で邪険にされがちなのだがこの母親は違っていた。

「貴方がみそじ君ね、娘から聞いています。」

何を聞いているのかは知らないが邪険にされなかった事で私は好感を持った。

暫く三人で学校の話しや日常話しをしていたが、時間も時間なので退室しようとM美に告げた時、M美が母親に目配せをし意外な事をこの母親から言われた。

今日はM美と一緒に病室に泊まって欲しい…と。

(おぃおぃ…このオカン俺もM美も中学生やぞ…)

…と思ったので”帰ります”と行って出ようとしたがM美が袖を引っ張り半泣きになってやがる。

結局押し問答は数分続いたが異常に袖を引っ張りM美が泣きそうだったのがたまらず根負けし病室で一夜を明かす事になった。

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