投稿者:和
タイトル:橋の上
これは、私が体験した話です。
私が17〜18歳位の頃、いわゆる心霊スポット巡りを頻繁に友人と行っていました。私は自分は霊感等というものは全く皆無な人間だと思っていたし、「幽霊なんて怖くない」むしろ見てみたい、など思っていました。
そんなある日、友達四人で集まり雑談をしていると、定番のごとく心霊スポットに行こうとゆう話になり、私は一際乗り気に参加しました。
そして、一番目は地元のキャンプ場が結構出るらしいとの話しを聞き行ってみたのですが、友人の一人のA美が怖がりで中までたどりつけず入り口付近で引き返す事になりました。
帰りの車の中でA美以外の三人は残念がり、私は半ば消化不良でイラつくような態度をとってしまいました。
すると、他の三人に悪いと思ったのか、A美が
「本当にヤバいものが出るってゆう廃病院がある」
と、ポツリと漏らしそれを聞き逃さなかった私が、率先してそこに向かおうと提案し、A美以外の二人は快諾しA美もしぶしぶ了承したので、噂の廃病院に行く事になりました。
しかし、噂の廃病院に近付き建物が遠目に見え始めた時、ふと車の窓から建物を見た私は、なんとも言いがたい感覚に陥りました。まるで私達四人を誰かが監視しているような、いいしれぬ不安におそわれたのです。
しかし、自分が言い出した手前や、でも行ってみたいとゆう好奇心を抑えきれず、悶々としているとやがて車が廃病院の前に到着しました。
車から降りて病院を見上げると、確かにいかにも何かが居そうな陰湿な空気が流れており、深夜だったこともあり一段と暗く恐ろしい場所のように思えた。皆その雰囲気に呑まれたのか誰も中へ入ろうとはしませんでした。
しかし私はこの場に立ち尽くしてるのも何だか嫌だったので、さっさと一回りして帰ろうと閉じた塀をよじ登ろうとすると、A美がただならない様子で目を塞ぎ泣き始めたのです。
突然の事に友達二人がA美を慰めていたのですが、私は塀に手をかけたまま動けずにいました。何故なら私は、見てしまったのです。
三階の中央付近の窓から女性らしき人が目をひんむいて私を見ているのです。
私は身をすくめながらも、目をこすりました。私は非常に視力が悪く眼鏡かコンタクトをつけないと、一メートル先もなかなか見えづらいほどでましてや夜中の暗闇の中ではほぼ手探りになるほどでした。
しかしその時何もつけていなかった私に、その「人」だけはハッキリと目視出来るのです。真っ直ぐとギラギラとした目で私をいぬいて離さないのです。
いや、私が目を離せなかったのかもしれません。怖くて目を覆う事も出来ませんでした。
その後の事はあまり覚えていないのですが、車の中でA美と二人で震えていたのは覚えています。
そんな事があってからというもの、私は度々恐ろしいものを目にしたり不思議な音を耳にするようになったのですが、人間とゆうものはある程度の事には、慣れてしまうのかあまり怖いと思う事もなくなった頃、私は仕事を終えて友達の家に向かって車を運転していました。
その行き道に長い橋があるのですが、何年か前に女性が飛び降りたり車が落ちたりと新聞にも載ったような場所だったのですが、何度となく通っていたので別段恐くはありませんでした。
そして橋の上を走らせていると、私以外の車が一台も走っていない事に気付きました。
確かに私の地元は田舎なのですが、中心街に向かう為のその長い橋に車が絶える事は滅多になく、それに気付いた瞬間、いつもの橋がやけに長く遠く見え、不気味でしかたありませんでした。
早くやり過ごそうと速度を上げ、橋の中頃まで来た瞬間、それは現れたのです。
フロントガラスに身体をべったりとくっつけ怒りながら私を睨んでくるのです。
真っ赤に染まったフロントガラスとあまりの突然の出来事に急ブレーキをかけざるをえませんでした。頭をハンドルにぶつけ、軽く目眩を起こしながら前を見ると「それ」はなくなっていました。
それから、私は心霊スポットと名のつく場所には決して行かず、奇怪なものからは目を背け続けました。
やがて、不思議な体験をする事はなくなりましたが、今でもあの橋を通らなければならない時には、あの怒りに満ちた瞳と、恐ろしい形相を思い出し身震いしてしまいます……。
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