投稿者:水瓶座

タイトル:烏
中学2年。聞こえないはずの声や音が聞こえ、おかしな予感が的中しまくっていたピークの時期の話です。

秋か冬か、やや冷える晩だったことを覚えています。わたしは自分の部屋で、試験勉強をしていました。時間は10時過ぎ、後述する体験のおかげで未だに忘れられません。

ふと気付いたときには、もう始まっていました。ちょうどわたしの机がある真上の屋根辺りから、烏がギャアギャア鳴く声がするんです。一羽ではなく、三羽くらいは鳴いていたと思います。実家は街灯も人気もまばらなド田舎で、ごみ捨て場でさえ烏はほとんど見掛けないのに…。

しばらくは我慢して机に向かっていたのですが、気付いてしまったら最後

『こんな夜中になんなのよ、気味悪いなぁ』

と、勉強も手につかなくなりました。

たまらずダイニングキッチンへ行くと、両親が呑気にテレビを見ています。すぐに

『ふたりとも、こんな時間にこんなに烏が鳴いてるのに、のんびりテレビなんか見てて…気持ち悪くないわけ?』

と尋ねました。しかし父はわたしの問いを聞き流し、相変わらずテレビを見ています。母はわたしの訴えを聞いてくれて、天井を見上げ耳を澄ませてくれました。でも、返ってきた答えは

『烏なんか鳴いてないよ?』
『はぁ!?鳴いてるじゃん!すごい聞こえるよ!テレビ消せばわかるよ!』

パニックに陥ったわたしがテレビを見やると、流れていたのはサスペンスドラマでした。しかも隣りの部屋で妹が見ている、違うテレビ番組の音すら聞こえるほどの静かなシーン…。

母に

『あんた勉強しすぎて疲れてるのよ、一緒にテレビ見よう』

と言われましたが、またしても自分にしか聞こえないのか(この頃はこんなこと日常茶飯事でした)、と諦めて、自分の部屋に戻りました。

机に向かう気にはなれず、ベッドに横になると、ごく自然と

『あーそうか、コレ、この烏の鳴き声、誰か亡くなったことを知らせに来たのね』

という考えが頭に浮かびました。そして我に返ったときには、既に烏の鳴き声は止んでいました。



明くる朝、ダイニングキッチンへ行くと、いつもは一番早起きの祖父がいませんでした。母に訊くと、朝イチで出掛けたとのこと。何でも昨晩、祖父の友人が亡くなり、友人宅が遠方のため朝早くから通夜・葬儀に行ったそうです。しかも亡くなった時刻は、わたしが烏の鳴き声に悩まされていた夜10時すぎだったとか。

そんなことまで訊かなければ良かった、と思ったのは言うまでもありません。

わたしにしか聞こえない、わたしにしか予感できない、なんだか後味の悪い報せでした。
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