投稿者:かおり

タイトル:人形が…
今回はある不思議な話をしたいと思います。聞いて下さい。

それは私が中学生の春。家族で隣町まで、ドライブがてらタケノコを採りに行きました。タケノコを採り終わり温泉でくつろいでいると、町の案内板のようなものを見つけました。

何気なく見ているとある一か所に目が止まりました。

「お母さん!見て!髪の伸びるお人形があるお寺だって!」
「あら、本当。この町にあったのね〜。」

かの有名な髪の伸びるお人形。私も母も大発見といった形で、やや興奮していました。

「行きたいな!行ってみようよ♪」

元来ホラー好きの私はだめで元々とばかり、母に懇願しました。母はしばし悩んだ挙句、いいよ、と軽く応えてくれました。

車でそのお寺に到着し、さあ行こうとなったのですが、お寺を目前にして怖くなったのか母は行きたくないと言い出しました。 そこで私と祖父、まだ小学校低学年だった弟の三人で行く事になりました。

お寺の中は涼しくて、案外小じんまりしていました。声を掛けても誰も出て来てくれないので、仕方なく私達は勝手に見る事にしました。

三つ高い神棚?が並んでいて、その内の一番右の神棚の上の段に、お人形はいました。

当時私は近視にも関わらず眼鏡を忘れていて、ぼんやりと輪郭や色彩しか見えませんでしたが、赤い着物に髪の長さは肩より少し長いくらい、と確認しました。

何気なく見ていると、突然空気が変わりました。先程までとは明らかに、空気の重さが違います。

「重い…!何これ!!」

私が慌てて祖父と弟を見ると、弟は上半身を屈めて泣きそうな顔。祖父は全く何も感じてないらしく、鼻歌交じりに壁の展示物などを見ています。

「出よう!」
「うん…!」

空気の重さに上半身を起こせないまま、弟と手を繋いで外へ出ました。祖父は不思議そうな顔をしてついてきました。不思議とお寺から出た途端、空気の重さは感じなくなりました。

車の中で私達は興奮しながら先程の体験を母に話していました。そして人形の話になり、一番着眼すべき髪の話に話題が移りました。

「意外に長くなかったよ。肩より長いくらい。」

私がそう言うと、助手席に座っていた祖父が驚いた顔で振り返りました。

「何言ってんだよ、おかっぱだったろう。」

え?

「何言ってんの。肩より長いくらいだったよ?ねえ?」

弟に同意を求めると弟はうつむき暗い顔をしていました。

そしてボソッと一言。





「髪…足首まであったよ…」
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