廃トンネル

その先生は理科の教師で、自分から言いふらしたりはしないが霊感がある、という噂が流れていた。これからはその教師をK先生と呼ばせていただく。

一例を挙げると、そのK先生とNという生徒が理科室で二人きりで話している最中、K先生は全く別の方向、N以外の誰かを見ている様子だったという。Nは不思議に思ったが、そのまま話を続けたそうだ。

そしてNが話し終わった後、K先生は

「今ストーブの方向を見るなよ。」

と言ったそうで、Nは気味が悪かったのでストーブの方を言われたとおり見なかった。

しばらく緊張感のある沈黙が流れると、突然K先生が

「あ」

という声を上げ、それと同時にボッとストーブの火が消えたんだそうだ。

後で確認した所、灯油は十分に残っており、先生の不可解な行動から「霊」を見ていたんじゃないか?ということになり、それは校内にあっという間に広がった。

そしてこの話は教員にも伝わり、国語の教師Lと数学の教師Mが肝試しに、幽霊スポットとして有名な、ある山のトンネルに行くことにしたそうだ。そのトンネルは、今では廃トンネルだが工事の最中に多数の工員が死んだらしい。

緊迫感あるようにL先生視点。

俺とKは、Mの車に乗せてもらい例の霊のいる(駄洒落か)廃トンネルに行くことにした。夏休みのある日曜日の話である。都市伝説的な話だとは思うが、もし霊がいるなら霊感のあるというKが見つけてくれるだろう。

山のくねくねした道を通り、例のトンネルに到着した時には夜に待ち合わせたお陰もあってか、既に夜の11時を回っていた。

Mのいう話、このトンネルでは霊を呼び寄せる方法があるらしく、

「まずトンネルの中をしばらく進み、2つ目の非常口の前で止まる。そして深夜0時、余分な明かりを一切つけず、クラクションを4回鳴らす。」

というのがその方法だそうだ。無論車の正面のライトは禁止。時間に余裕があったが、とりあえずは2つ目の非常口を探す。見つけたが意外と奥にあり、出口(俺達の入ってきたところ)は真っ暗なせいでよく見えない。

この時点で11時15分。俺達はしばらく雑談をして時間を潰した。あと、座席を説明しておくと、運転がM、助手席に俺、後部座席にKである。

11時55分になると、全ての明かりを消し、いつでもクラクションを鳴らせる状態にした。

そしてLの時計が0時になった時、クラクションを4回鳴らした。





・・・・





沈黙が流れる。1分が5分くらいに感じられる。暑いことから流れるのではない、ひんやりした汗。緊張が流れる。

5分が過ぎた頃、Mが言った。

「なあ、やっぱり何もいなかったん・・・」

言い終える前に、Kが言った。

「な、何を言ってるんです・・・?そ、そこら中に・・・・」

歯をガチガチと言わせながら、Kが辺りを見回す。俺とMも周りを見るが、何も見えない。俺達はKがふざけているんだと思って、逆に笑っていた。

だが、状況は一変した。

Kからの声が聞こえない。さっきまで聞こえていたKの歯の音が消えていた。

「ん?」

俺はおかしいな、と思って車の天井のライトを探り当ててつけた。

・・・Kは失神していた。

「おいK!」

俺が呼びかけるが、Kからは返事はない。

「シッ!静かにしろ!」

Mが小さい声で俺を制した。



・・・何か音が聞こえる



・・・ベチ・・・。

・・・バチ、ベチ・・・



何かを叩きつけるかのような音。

流石に、ヤバイと感じる。

「おい、M、車・・・」 「ああ・・・」

車のエンジンをかける。

・・・かからない。

「か・・・かからねえ・・・」

Mが泣き顔になりながら言う。

ヤバい。何とかしないと・・・。

俺はまず明かりをつけた。車の中の懐中電灯で辺りを照らす。いざという時の為に持ってきた、電源が電池のランタン。それが辺りを照らす。

・・・・

さっきまでの音は止む。

「ハア・・・ハア・・・。」

俺達は既に汗をびっしょりとかいていた。

Mがもう一度エンジンをかける。今度はエンジンのたのもしい振動と音が伝わってきた。正面のライトもつけ、出きるだけ明るくしながらトンネルを出た。

トンネルを出たら、俺はKの状態を見るために後部座席に移った。Kは今は呼吸もしているし、大丈夫のようだ。

俺達は明るいところを求め、ガソリンスタンドに車を入れた。とりあえず安堵のため息が出てくる。

「おい・・・L・・・」

Mが俺を呼びかけてくる。

「ん・・・なん・・・・」

言いい終える前にまた背筋が凍った。



車のガラスというガラスに、つけた覚えのない、手形がベットリと無数に・・・・・・
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