真上の住人
学生の頃、安アパートに住んでいたんだけど、そこは俺の大学の学生が住人の全部を占めていた。寮ってわけじゃないけど1階に5部屋2階に5部屋、全員が学生。
入学して暫くは親戚の伯父さんのとこから通っていたんだけど、友達からそのアパートを聞いて引っ越したんだよね。夏休みに引っ越したから、殆どの奴らは田舎に帰っているらしくアパートは静かだった。
引っ越して翌日の夜に電話がかかってきた。
その頃は携帯は出始めで俺はせいぜいがポケベル持っていただけだ。実はそのアパートには電話が部屋に有った。古臭い電話なんだけど、何でも各部屋に1個有るんだって。留守録も付いていないダサいタイプなんだけどね。
で、かかってきたのは無言電話だった。
次の日も、その次の日もかかってきた。毎日夜の10時になると電話がかかってくる。1週間たった日曜日についにブチ切れた俺は
『っざっけんなよ、てめえ!ぶっ殺すぞ!』
って思いきり怒鳴った。
電話が切れた。
その瞬間、俺の部屋の真上に当たる2階でモノすげえ足音と、ドアがバタンと閉る音がする。
(え?)
と思っていると、鉄の階段を駆け下りてくるカン、カン、カンって音が聞こえてすぐに俺の部屋の玄関のブザーが鳴った。
何が何やら理解出来ずに、ドアののぞき窓から外を見ると金属バットを持ったジャージ姿の男が立っていた。
そいつが携帯を耳に当てているのに気づいたのと、部屋の電話が再びしつこく鳴ったのでやっと分かった。無言電話の相手がそいつだったんだ。
そいつは一晩中、玄関の外で電話し続けてきたよ。もう最高に怖かった。
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