誰か居る

携帯にまつわる体験をひとつ。

10年ほど前に大阪に済んでいた時の話です。当時名古屋に仲の良い友達が住んでいて良く電話をしていたんですが、その時の話題が別の友達の彼女の話。

なんでも結婚を一週間後に控えたある日に、彼女が今で言う出会い系みたいなので、オトコを漁っていた事が発覚したというんです。しかもとっかえひっかえカナリ激しく。

そんな話をネタに“女はこええよなー”とか言ってたんです。そしたら急に通話が途切れた。でも電話自体は切れてない。???

10秒くらいで音が戻ってきて友人が、

“なんだよお前、彼女が居るのにそういう話を俺に振るなよ”

と怒るんです。訳がわからないので何があったのかを聞くと、こちらでは音が聞こえなくなりましたが向こうには聞こえていたようです。

違う人の声が。

奴が言うには、前の会話の直後に僕ではなく女の人が電話口にでて

“ウチはそんなんせえへん。そんな軽いセックスせえへんで”

と関西弁で一方的に喋って、また僕に変わったと言うのです。もちろん部屋には僕一人。

携帯での混線というのは聞いたことがありませんし、ましてや横で聞いていたかのようなその発言。気持ち悪いやら怖いやらで、その晩は寝れませんでした。暫くは携帯を使うのが怖かったです。

ヒィィィィィィィィぃぃー

また携帯でウェーン

前の携帯事件から2年後くらいでしょうか、今度は東京都足立区にすんでる時でした。当時仲の良かった女の子が霊感が強く、良くああだこうだと話を聞いていました。

とある初冬の晩、12時近くにああだこうだと何時ものように電話をしていると、突然彼女が怒り出して、

“アンタさ、あたしと話してないで彼女の相手してやんなよ”

というのです。何のことやらさっぱり解らず、暫くそういうやり取りを続けると、、、

“さっきから女の声がずっとしてるんだよね、彼女といちゃつきながら他の女と話するってアンタどういう趣味?”

と、dでもない事をいうんです。

僕は一人寝の寂しい身の上でしたから、必死に否定しました。(別に必死になる必要も無いんだけど)でも彼女が言うにはそうしているその瞬間にも声が聞こえるというのです。彼女が言うには、

“アカン、ウチのこと見て”

とか言ってるらしい。

勿論テレビもラジオもエロビデオもありえません。だって当時の僕の部屋には、テレビが無かったんだから。今時ラジオだって持ってませんよ。つまり、音の発生源は自分しか居ないんです。それだけ説明しても、いや、居るんだよ、あんたのそばに。それだけは間違いない!と長井なんたらバリに言い切るんです。

最初はおふざけだろうと思っていたのですが、余りにもしつこいので最後には

“居ないから!”

と語気を荒げると、キッチンからガッシャーンと、洗い置きした食器が崩れる音が響きました。その瞬間です。

空気が変わりました。寝室とキッチンはすりガラスで隔てられているのですが、そのすりガラスの向こう側が絶対におかしいんです。もうそうなったら息をするのも憚るくらいの緊張感です。

電話口の女友達に

“い・・・居る。確かに居る。どうしよう?”

と言うと、むこうもどうやら自分が居るといいつづけた女が生身の物では無いと悟ったらしく、

“ああ、そう言う事ね”

と冷めたい言葉。助けを求めるがどうすることも出来ず。死にはしないから諦めて寝ろとばかりに話を打ち切られてしまいました。

それからは手当たり次第に友達の所に電話しまくってなんとか明け方までつなげ、朝日と共に部屋を出ました。

どうも大阪と足立で体験した怪異が、同一のもののような気がして成らないのですが、全く心当たりが無いんです。また、この足立の部屋には結局2年住みましたが、どうにも具合の悪い部屋で、何が悪い訳ではないのですが、病気がちで気力も沸かず、寝れば寝るほど具合が悪くなる部屋でした。

そしてその後、再び転勤する事となり家財を全て運び出して、掃除を終えた寝室の引き戸の中仕切りに見つけたものは、紛れもなく御札でした。

最後の最後で見つけたのがまだ幸運だったと言えるでしょう。だって、その引き戸って妙に臭く、夜中に良くうなってたんですよ。僕は単に、天井裏にでも下水の排水パイプでも通ってて、夜中に上の住人がトイレでも使ったんだろうと思ってましたから。

今のところ携帯の話に続編は有りませんが、何時また何が起こるかは解りませんからね。因みに大阪と足立の時では携帯がセルラーとドコモで違いました。つまりは電話自体の故障や運営会社による問題ではないと言う事ですね。

いったいなんだったんでしょうか?
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