sinitai.com
今から2年前の話です。
ある夏の夜、友人のA君の彼女が留学することになり、A君と別れたということで、彼を励まそうと、当時一人暮らししてた私の家で飲み会することになりました。結局6人集まって、午後9時くらいから始まったんですが、12時過ぎに、B君が
「ちょっとテレビ見せて」
と言ったので、みんなでテレビ鑑賞会になりました。テレビでは普通にニュースやバラエティーが放送されてて、普通に見てたんやけど、そのうち画面にノイズが入るようになりました。
「テレビ壊れてるんちゃうん??」
「壊れてへんって。単に電波おかしいだけちゃうん??」
と、話をしていると、突然画面が砂嵐に変わりました。
「砂嵐やで。これは重症やな」
と誰かが笑った途端、砂嵐の中に「死にたいドットコム」という文字が浮かびあがってきました。
「何これ??」
一瞬浮かび上がった文字は、すぐに消え、また元の画面に戻りました。
「今の・・・何??」
「死にたいドットコム・・・って書いてたよな??」
「うん。ちゅうかマジでキモイねんけど」
私たちは騒然として、とにかく気味が悪くてどうしようもありませんでした。
「とりあえず、テレビ消そう。気持ちわるすぎる」
「そやな」
そう言って、テレビを消しましたが、さっきの画面の話をしてました。そしたらA君が
「なぁ、お前のパソコンで調べてええ??さっきのん」
と言い出して、パソコンで検索をはじめました。
「調べるって・・・キモイやん。ちゅうか、見間違いかもやし」
「せやけど、ここにいてる連中、みんな見たやん。なんかの番組の番宣かもしれへんし。おもしろそうやん」
と言って、検索を始めました。
いろんな検索ツールで「死にたいドットコム」を検索しましたが、該当なし。単なる見間違えちゃうか??ということで収まりかけてましたが、
「もしかしたら、sinitai.comって直接打ち込むんちゃうか??」
と、アドレスを打ち込みました。すると
「一緒に死んでくれる??」
という画面が現れ、血まみれの女の画像が画面一面にでてきました。
「ちょっと、これマジでヤバイんちゃうん??」
「ちゅうか消せって」
あまりの画像の恐ろしさに、画面を閉じ、パソコンの電源を落としました。
「なんか・・・マジでヤバイような気がするねんけど・・・」
「番宣とかちゃうやろ、アレは」
「そしたら何なんよ??さっきのん」
と、みんなパニクってたら、イキナリテレビの画面が点いて、大音響で
「一緒に死んでくれる??」
テレビに現れたのは、さっきパソコンの画面に写った血まみれの女で、その女と目が合った瞬間、私は意識がなくなりました。
気づいたら、夜明け前で、みんなお酒を飲んでました。
「さっきの女、何なん??」
「え??」
「さっきのんやん。何よ。アレ」
「せやから、何がよ??寝ぼけてるん??」
「え??」
私は気絶する前の出来事をみんなに話ました。すると
「はぁ??夢やろ。あんた夢みてたんやって」
とみんなが言いました。
「夢ちゃうって。あたし今まで気絶してたやん」
「あんたは、酒チャンポンして酔いつぶれて寝たの」
みんな、嘘をついてるようには見えず、あたしは夢だと思うことにしました。実際、sinitai.comをアドレスバーに打ち込んだ形跡もありませんでした。
その日の午後、飲み会を終え、みんなが帰り支度をしていると、バイトがあるからと私が酔いつぶれていた間に帰っていたA君から電話がありました。
「あんな、変なこと聞くけど、お前昨日の夜・・・」
「え??」
「いや、何もない。ゴメン」
そう言って、電話を切りました。気になって、かけ直しましたが、すでに電源が切れて・・・のガイダンスが流れてきました。
それから、A君とは会ってません。というより、A君とは連絡がとれなくなり、行方がわからなくなりました。友人たちの間では「彼女と別れた傷を癒すために、放浪の旅に出てる」と言われていますが、私にはそうは思えませんでした。
私はあれから、何度か「sinitai.com」を調べましたが、そういうページは存在しないと現れます。夜にテレビを見ても、あんな画面は現れません。一緒にいた友人たちはみんな
「いや、お前の妄想やろ」
と言って、相手にしてくれません。
そして1年経ったころ、偶然にもA君の元彼女と会いました。彼女はA君と別れて数日後、A君から電話があったと言いました。
「カナダの寮にわざわざ電話してきて、『俺と一緒に死んでくれる?』とか言われてん」
「え??」
「なんか、酔ってたんかな。とりあえずスルーしてんけど、そしたら『Y(私の名前)は大丈夫やから心配すんなって伝えてくれ』って」
A君は、未だに行方がわかりません。私はA君が彼女に言った言葉の全てが、気になって仕方ありません。A君がどうなってるのか、凄く気になります。でも、2年前に一緒にいた友達はみんな
「夢やって、夢」
と言って、今ではその話はタブーになりました。
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