前任者の心遣い

SE(システムエンジニア)をやっていて何日も徹夜が続いた深夜 システムを月末までに仕上げなければならなくて食事も中々取れず朦朧としていた。

そのときキーンと金属音がしたと思ったら、入室制限のある部屋のキー解除の音がして誰かが入ってきた。それでも振り返って相手している暇は無く黙々とキーを叩いていたら、方をポンポンっと叩かれ

「これくらいにしておけ、明日助っ人が来るから、おまえはもう帰れ」

と言われた。自分でも限界だと思ったので

「そうですね、ちょっと休ませていただきます」

とふりむいたがそこには誰もいなかった。手の感触もちょっとグリーンノート系のコロンの臭いもしたのに。自分でもちょっとおかしくなってきたかと、苦笑いしながら会社を後にして、次の日出社した。

昨日のことを次長に話すと、ちょっとした沈黙の後、自分の前任のSEが体壊してちょうど一年前に亡くなっていた、コロンはすっきりするためにグリーンノート系を使っていたということを淡々と話してくれた。

「このままじゃ君も体壊すからちょっと人増やすか」

と、すぐ助っ人要請してくれたのだが、助っ人の事は限界ギリギリまで寝ないで働いた自分の幻覚だろうと話していなかったのに、その時は鳥肌がたったよ。

なんか、心の中で

「ありがとうございます」

と手を合わせてみた。
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