第七十二話

語り部:さら ◆H.5jToJ1Us
ID:+1o1WDKH0

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『お盆』

お盆ですね・・・。昨日はお坊さんが家にお経をあげに来てくださいました。

子供の頃は毒々しいほどの鮮やかな牡丹色の小さなちょうちんを持って、夜、町内の角までご先祖様をお迎えに行ったものです。

お迎え火をたき(玄関で焚くのですが、風の向きにかかわり無く、不思議と煙が家の中に入っていきます)ご先祖様を家の中にお迎えいたしました。



お盆にはご先祖様があの世から帰ってくる・・・。



皆さんはそんなお年寄りの言葉を信じない人もいるけれど・・・、それってホントのことですよ。

お迎え火を焚いた後、皆で食事をしている最中に玄関に続く廊下に何気なく目をやりますと・・・、



そこに20年以上も前に亡くなった祖父が立っていました。



煙のような白いシルエットでしたが、それでもはっきりと祖父だと分かる形をしていました。

『ああ、おじいちゃんだ・・・』

そう思いました。怖くもなんともありません。

おじいちゃんがいる空間と私の空間は異次元でつながっているような・・・・チョット不思議な感覚でした。

それからはっとわれに返り、そんなバカな・・・と思い返し再び廊下を見ますともう祖父はいませんでした。

驚いて母にその事を話すと、事も無げに

『帰ってきてるよね、お盆だからね、おじいちゃんは毎年着流しの着物姿だよ』

と言いました。私が見た祖父も着物姿でした。

今家に何人ご先祖様がいるのか分からないけど、とりあえず今夜はこのスレの怖い話も怖くないんです。私のまわりには大勢の人がいるみたいですから。
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