第六十四話
語り部:エソ ◆CQai/AiFaI
ID:jfcR3Cb90
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『何か』
田舎に泊まった時の話。
私の田舎は米農家で、まあ、田舎独特のと言えば宜しいでしょうか。とても大きな家で、いとこが集まる時は一家族に一部屋割り当てていました。
私がいつも使う部屋は、仏壇のある部屋の隣。襖で仕切らているだけです。特に怖いということは無かったのですが。
ある夜のことでした。部屋の時計は止まっていたので、時刻は覚えておりませんが、十二時は回っていたと思います。ふと目が覚めてしまったのです。
何も変わったことは無かったのですが、しばらく目を開けて天井を眺めていました。
しばらく経ってふと横に目をやると、仏間を仕切る襖に、何かのシルエットが見えました。不思議と怖くはありませんでした。好奇心が勝っていたのでしょうか。
私は、そのシルエットが大変気になり、正体を確かめようと思い、襖に手をかけました。
すると、私の姿が見えるはずの無い祖父が突然、
「だめだーっ!」
と叫びました。(祖父は別の部屋です)
あまりの大声に驚いたのですが、同じ部屋で寝ている両親は起きる気配がありません。
寝言だろうと思い、また襖に手をかけました。すると再び、
「駄目だと言ってるだろう!」
と、物凄く激しい口調で叫びました。
流石に私も怖くなり、急いで布団を被りました。
祖父の声はそれ以降聞こえませんでしたが、シルエットは寝るまで消えませんでした。赤く発光したり、姿を様々に変えたりしながら。
翌日、祖父にそのことを聞いてみると、祖父は変な夢を見た事を話してくれました。
「何を見たかは覚えとらんよ。ただ、お前が何かに手をかけていたから」
「なにか、って?」
「わからん。とにかく、触っちゃならんものだ」
本当にそれが何か分からなかったそうです。
もし、私がそれを覗いていたら、どうなっていたのでしょうか……。
【完】
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