第五十七話
語り部:オカン系 ◆6mo7Zec8cs
ID:nPNgRExy0
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『すがるモノ、すがられるモノ』
あれはそう、ちょうど夏の終わり頃のことでございました。山岳信仰の知人と共に、山中のお寺さんと、お社に行った時の話でございます。そこのお寺さんに、大変素敵な、優しい龍の像がございました。龍神さんもお祀りしている所でしたので、なんの不思議も感じず、ただただそのお姿に見惚れておりました。
さて、その後、宿へ移動する途中のこと。普段ならば、トンネルを車で走る時にはとてもワクワクしますのに、楽しむ余裕はございませんでした。その時は何か後ろから引っ張られるような、そんな感覚がお寺さんから遠ざかるにつれ、非常に強くなっていたからでございます。
トンネルを抜けると、日もとっぷりと暮れております。そこが限界でございました。
「もう、駄目。ごめん。」
知人に謝り、助手席の前の手すりに頭をもたれました。そうでもしない限り、自分を支えては居られなかったのでございます激しい頭痛、吐き気、鳥肌立つ位の寒気。知人の声が遠くに聞こえます。
如何ほどの時間がたったかは、判りません。気がつくと、知人が真言を唱えながら時折、私の背中を叩いておりました。叩かれるたび、何かが。何かが、ずるり、ずるりと抜けていくような、気持ちの悪い感触がありました。
最後に薬師如来さんとお不動さんの真言を聞く頃には、ようやく回復致しました。
「大丈夫か?どうした?何をした?」
そこで、お寺さんで龍の像に見惚れていたことを申しますと、
「ああ、まだ上がってないのに憑いてこられたんだな。お前、オカン系だからな。」
詳しく聞きますと、あの龍の像は水子供養の為にあったモノ、とのことでした。
その後、宿に行く前に
「きちんと祓った方が良い」
とのことで、お社にお参りいたしました。手水場で念入りに清め、鳥居をくぐろうとした時でございます。
轟!
とばかりに突風が、お社より吹きぬけてまいりました。山中とは言え、まだ暑さの残る頃でしたのに、身を切る様な冷たい風でございました。
その後、「祓え」を行い、御前より下がる頃には境内も非常に涼ろやかで、大変心地良く、満天の星が降るようでございましたよ。
【完】
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