第五十二話

語り部:あ〜る ◆RYOKO29/F.
ID:m3wfoMM60

【052/100】
題名:電柱

//知人が女子高生時代に体験したお話し。
//彼女の一人称で書きます。

私と同じ陸上部のA子とは学校でもっとも仲の良い友達でお互いの家も近かったので、いつも一緒に下校していた。

その冬の黄昏時、表通りにミニバイクのひったくりが出るというニュースがあったので、駅から裏道を通って帰ることにした。

静かな住宅街を二人で喋りながら歩いていると、急に酷い頭痛に襲われた。そして、少し先の電柱のたもとに「それ」はいた。

霊感の強いA子が先に気付いて、

「見ちゃ駄目!」

と小声でいいながら私の手をしっかりと握ってきた。

私もちらりと見てしまったのだが、髪の長い女のようだ。まるで貞子のように白っぽいドレスのような服を着ている。だが、その体は後ろの電柱がうっすらと透けており、どう考えてもこの世のものとは思えない。同時に高周波音のような音が耳元できんきんと鳴った。

二人で必死に気付かないふりをしてやりすごした。そして、電柱から10メートルぐらい先へ行ったあたりだろうか。

嫌な音も頭痛消えたため、私たちは安堵感に包まれた。そして、

「今のやばかったね」
「ああ怖かった」

などと言葉を交わしながら、二人して、つい後ろを振り返ってしまった。

「それ」はまだいた。

でも今度は首がなかった。ちがう、首は……首だけが電柱の上の方、体から2メートル以上の位置にゆらゆらと浮いていて、こちらを睨んでいた。しかも、その首は上下逆だった。

私たちは絶叫しながらその場を走り去った。

あとで聞いた話では、その電柱のそばの家で主婦が首吊り自殺をしたそうだ。

【完】
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