第四十一話
語り部:辰砂 ◆DQdWMurCSc
ID:iHYwWtAM0
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私が大学一年のときに体験した話です。
私は地元の大学に通っておりまして、自宅から自転車で通学しています。その出来事は十月の末ごろだったと思うのですがそのへんはっきりとは覚えていないのでもしかしたら違うかもしれません。
ともかく、間違いのないことにはわりあい日の落ちるのが早くなり、けれど雪が降りだすのはまだまだ先というあたりの時期でした。曜日は金曜、五限の講義――仮にD学としておきます。わかる人にはたぶんわかるw――にTVの取材が来た日だったかな。ともかくその日はただでさえ授業の時間が長引いた上に、そのあと他の受講生と雑談していてすっかり帰りが遅くなってしまったのです。遅くなったといってもそれほどじゃない、せいぜいが八時前ごろです。
秋の話ですからそもそもが、普段から帰宅時はもう真っ暗なわけで、その日が特別遅くなったという感覚があったわけでもなく。真面目にクラブ活動なんぞやってる人は普通にもっと遅いでしょうしね。とはいえ、もうその時間には交通量もだいぶ減っていて、そのときには珍しくも車は一台も通っていませんでした。
んで、帰り道の途中に工事中だった場所がありまして、そのあたりだったかと思うのですが、二人組の男子高校生(だと思う)とすれ違ったのです。
背丈はふたりとも同じくらい、ひとりが自転車を引きずっていてもうひとりが徒歩。なにやら雑談しながら歩いていました。それで、彼らとすれ違ったとき、自転車を引いていたほうが突然叫んだんです。
「路 上 だ ーーーーーッ!!」
って。
なにごとかと自転車を止めて振り向きましたが、もうそこにはだれもいませんでした。
すげー怖かった……と言いたいところなんですが、その実私の頭の中は?で一杯でした。
単に見失ったにしても怪異にしても、あまりに意味不明で。
【完】
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