第三十九話
語り部:虎
ID:hexQpjw10
☆お盆の話☆
小学校の時だった。おばけや妖怪が好きな仲間がつるんでたグループがあった。今、俺が名付けたんだが「少年心霊調査団」とでもしておこう。
当時、そんな名前は付けていなかったけどつるんでる仲間はいつも一緒だった。色々バカやったり、チャリで行ける範囲内の心霊スポットに出向いて調査のマネごとやってた。たしか去年の百物語にもネタ書いたが色々あったな〜。
そん中からお盆の話を一つ。
佐々木の家は農家だった。家は昔ながらの木造のデカイ家。部屋数は10以上あっただろ。みんながイメージするド田舎の家を想像して間違いない。裏は竹林でその中に俺らは「秘密基地」みたいなの作って遊んでいた。
そこでみんな持ち寄った怖い話をしてた。季節は梅雨の今くらいの時期だったと思う。
俺ら少年心霊調査団には楽しみがあった。佐々木家に伝わる、伝説を確かめるのである。伝説はこうだ・・・。
佐々木家では、お盆に親戚一同が集まる。本家なので県外などから沢山の人で溢れかえる。泊まって墓参りしたり、夜は宴会が家の風習だ。
そんな中、インターホンが「ピンポーン」となる。また親戚でも来たのかと思って玄関に出るが誰もいない・・・。
それがお盆中、何度かあるという。
おっぴさん(方言:ひいおばあさん)が言うには先祖が帰ってきているそうだ。一家もそれを信じている。おっぴさんは怖い話や不思議な話いっぱいしてくれて調査団にはカリスマ的存在だった。いつか機会があればおっぴさんの話も語ろう。
先祖は昼夜かまわず帰ってきては「ピンポーン」をならす。そして送り火を焚く頃には「ピンポーン」は鳴らなくなる。
これが、佐々木家のお盆の伝説だ。
調査団の中ではほとんどがこの話を信じていた。佐々木の母親や飲んだくれの親父、もちろんおっぴさんまでもが真実だと語るのだから信じずにはいられない。ならば当然、自分らも体験したくなるのが少年心霊調査団なのだ。
交代でお盆中、佐々木の家に泊まることになった。泊まることを許されなかった連中も昼間には皆、佐々木の家に集まりその時を待った。俺は幸い、お盆中の外泊を許可され佐々木家でお盆を迎えることとなる。
庭にテントを張り仮設の「調査団本部」が出来あがる。メンバーは俺ら調査団と佐々木の生意気な弟、佐々木家に泊まりに来た親戚の子が何人か加わり結構な数になった。
最初の「ピンポーン」は俺らが調査の事など忘れて鬼ヤンマ捕りしてる時に鳴った。残念ながら俺らはその場にいる事は出来なかったが、第一の犠牲者はおっぴさんだった。佐々木母に呼ばれて玄関に急行する俺らに、
「ほ〜ら先祖の誰かが帰ってきたぞ」
とかいう事を言って、また自分の部屋に戻るおっぴさん。俄然、盛り上がる俺ら。作戦本部長の俺は、家の中で待機することを提案する。
あっという間に3日がすぎ最終日(たしか16日?)その後の「ピンポーン」は何度もあったものの、無人ではなかった。
期待している先祖様の帰宅はいまだ、たったの一度だった。忘れた頃にやって来た2度目は調査に飽きてファミコンをしていた時に鳴った。
「ピンポーン、ピンポーン」
すっかり飽きていた俺を含めた調査団。佐々木家の親戚だけが面倒くさそうに玄関へ向かう。その後、
「うぉおおおおおおおお!」
っという親戚の声に皆が玄関へ走る。二人目のご帰宅である。
あの時は心臓がはち切れんほどドキドキした。心霊体験にはその前にも遭遇しているがその時は別だった。ある種の達成感だろう。
その後、帰宅者は無く、送り火をもってその夏の大イベントは幕を閉じた。
後日談がある。
2度目のピンポーンは佐々木の生意気な弟のイタズラであった。あの後つい、口を割ってしまったらしい。だが1回目のおっぴさんの時はやってないと言う。たしかに俺らと一緒に遊んでいたはずだ。
もしかしたら1回目はおっぴさんが仕組んだファンタジーかもしれん。おっぴさんが亡くなった今では確かめようもない。もしかしたら今年の盆もおっぴさんが「ピンポーン」を鳴らすのかもしれない。
おっぴさん、色んな怖い話をありがとう、安らかに。
【完】
⇔戻る