第三十六話

語り部:森の人 ◆7FJky9yTMw
ID:y0aQ28sV0

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友達の体験談です。僭越ながら語り部を務めさせていただきます。

ある日、仕事場の移動が決まりました。私は数学教師をしており、まだ教師を始めて3年しか経っておりません。

教える学校が変わって最初の問題は、住む所です。私の場合は、ほとんど県の端から反対側の端に移動したようなもので、非常に疲れる引越しとなりました。

移動した住所は、特に安いとか高いとかお札が貼ってるなどということはなく、普通の物件でした。ただ、近くに大きなデパートなどがなく、普段ケチな私も引越し屋を呼ぶほど電器屋は遠かったのです。(運ぶだけにしてもらったが)

全ての荷物をほどき、配置し終わるには一日では足りませんでした。小さい県とは言え、移動に時間がかかり過ぎたのです。とりあえず疲れた体をベッドに埋め、すぐ寝られました。

翌日。教師の仕事が始まるのは、三日後。教師の仕事は忙しいので、三日間も休みがあると言うのはありがたいと言うよりも、勿体無い気がする。と、私はそんな事を考えてるうちに、

「あ、荷物・・・」

と思い出し、荷物を開け始めた。

全ての荷物を開け終わった頃には、午後5:00になっていた。

「さて、テレビ見ながらお茶でも飲んでだらだらするかー!」

と一人事を言い、ベッドにボユンボユンと飛び乗って、テレビをつけた。

・・・・・・私は怖がりだから、一人と言う事を意識したため、誤魔化そうとしたのですが。

テレビを見てる内に夢中になりすぎ、気づけば午後11:00。

ヤバい、そろそろ寝なきゃ、と思いテレビを消し、布団に潜りこんだ。そしてその時初めて気づいた。

「なんで。 なんで。 なんで。 なんで。」

と隣の部屋からずっと、ずっと、一定の音程で、抑揚のない声でリピートのように繰り返し聞こえてくる。すっごく怖かったが、隣の声、もしくは隣のテレビの音、と無理矢理眠ろうとしました。

「なんで。 なんで。 なんで。 なんで。」

・・・しかし、案外うるさい。寝られない。その声しか部屋には響かない。何だか、洗脳されているような気分だ。

喉が渇く。だけど怖いから立てない。汗かいたし、今日風呂入ってない。無論却下。

その時です。

コンコン、「すみませーん・・・」

俺はドダドダドダドダドダとドアに走り寄った。

「はいっ!なんでしょうっ!」

俺の声の大きさと、あまりの出る速さ、勢いに、相手は非常に驚いたようだ。

「あ、はい・・・あの、失礼なのですが、テレビの音かあなたの声なのかわかりませんが、『なんで』という声がこちらにも聞こえるので、静かにしていただけましたら、と・・・。」
「あ、はい・・・」

思わず、こう答えてしまった。じゃあ、あの声はどこから聞こえていたのか。

ふらふらしながら部屋に戻ると、あの声が聞こえてきた。

「なんで、って思ったでしょ? あははははははははははははははははははははっ!!!あはははははははははっ!!」

それ以降、あの声は聞こえてこない。

【完】
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