第三十話
語り部:隊長 ◆NEO/XeePcY
ID:/4YrzvB80
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「コアラ男」
2003年某日、私は一人暮らしをしているアパートで昼寝をしていました。ふと目が覚めて、時計を見てみると午後二時半。別に予定もないので二度寝をしようと寝返りを打ちました。私の向いた方向にはベランダがあり、天気も良かったので窓とカーテンを全開にしていたのですが、その瞬間私は凍りつきました。
なんと窓の向こうの電柱に人間らしきものが引っ付いているのです。
一瞬工事の人かとも思いましたが、作業着は着ておらずボロボロのシャツと半ズボンといったいでたちです。そいつはコアラのように電柱に抱きつき、私を凝視しています。背が低く(子供?小人?)丸っこい体をしていて、ボサボサに垂れた髪の間から気持ち悪いぐらい大きな瞳が覗いているのです。
ちなみに私の部屋は3階です。それを思い出した私はゾーっと体から血の気が引いていくのを感じました。
すぐさま立ち上がり窓とカーテンを閉めました。それから怖くて外に出れないので、当時付き合っていた彼氏に電話をして来てもらうことにしました。
彼氏が来てくれるまで私はトイレに篭り、今のコアラみたいな奴は何だったのかと思案していました。するとベランダのほうから何やら音が聞こえてきました。
「コーッ コーッ コーッ」
私は震えながらも好奇心に負けてそっとトイレのドアを開けるとベランダのほうへ忍び足で向かっていきました。足元を吹き抜ける風を感じて、私はベランダのドアが開いてることに気がつきました。
「しまった!鍵をかけ忘れた!」
大急ぎで鍵をかけ、電柱にあいつがいないことに気付きます。言いようのない恐怖感がこみ上げてきて、私はもう一度トイレに篭ろうときびすを返しました。そして私は恐怖のあまり声にならない声を漏らしてしまいました。
「あっ」
なんとテーブルの上に奴が立っているのです!奴は
「コーッ コーッ コーッ」
と不気味な声(音?)を口から出し、私めがけてジャンプしました!奴は見事に私に抱きつき体を締め付けてきます。まるでコアラのように。
口からは涎のような液体が垂れ落ち、
「コーッ コーッ コーッ」
と前にも増して息を荒げて締め付けます。
私は意識が薄れていくのを感じました。
次に目が覚めたとき、私は病院のベッドの上にいました。周りには彼氏と友達が数人。私は安堵のあまり泣き出してしまいました。
彼氏の話によると、私は部屋の中で倒れていたらしいです。
「あいつは!?」
と私は聞きましたが何のことかわからないようでした。話したところで信じてもらえないと思ったので結局黙っていました。
医師は脳貧血による卒倒と診断しましたが、元々体は健康なほうだったのでそんなことはありえません。
それから数日後に私は引越しました。
引越してからはもうコアラ男(勝手に名前付けちゃいました)は見てません。彼氏とは別れましたが今は新しい彼氏とそれなりに普通の生活を送っています。
ただあの日以来、毎日と言っていいほど夢の中にコアラ男が出てくるのです。
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