第二十九話
語り部:補欠 ◆d0KhI.EMzc
ID:kjdmbbZx0
【029/100】
『団地、葬儀場、コンビニ』
欠番が出たため、入り込ませて頂きます。ところで皆さんの地域は今、雨が降っているのでしょうか・・・・
数年前の話ですが・・・・僕は父の勤める会社の団地(社宅)に住んでいました。その団地のすぐ近くにはコンビニがあったのですが、団地の住人、夜はちょっと遠回りしてコンビニに行くわけです。
、、、というのもこの団地とコンビニの間には葬儀場あったのです。団地のフェンスに扉が付けられていてそこをギイィィィ・・・っと開けると葬儀場の裏に出るわけです。
葬儀場の人は我々団地の住人に対して葬儀場の土地を突っ切ってくれて構わないと許可してくれたのですがやはり夜は気味が悪い。(お墓よりはましですが。)それで皆少し遠回りしてコンビニに行くわけです。
さて、ある冬の晩のこと、帰宅する前にこのコンビニに寄って少し長居していたところ雨がパタパタパタパタと降り始めてきました。
(これはいけない。今日は雨具も何も持っていない!)
この一体は土地が傾斜しているので道が上手いこと碁盤の目のようにはなっていないので団地に帰るにはやはり遠回りしなければならない・・・が、雨はあっという間にどしゃ降りになってきたのでもう遠回りしていられない。仕方なく葬儀場の裏を通っていく決意をしました。
常夜灯も何も無いですからこのルートが凄く暗くて恐ろしい。ただ僕の前20メートルくらいかな・・・女性と子供の二人(親子?)が歩いているのがぼんやりと見えました。
「あぁ〜、この親子も突然雨が降ってきたもんだから葬儀場の裏を通るんだな・・・」
親子は葬儀場の角を曲がって丁度裏手の方へ曲がっていきました。さて、そろそろフェンスに取り付けられた扉を開ける不気味な音が聞こえるぞ・・・・
・・・
・・・・・
・・・・・・・聞こえない。
いくら雨がうるさくてもあの音を聞き逃すはずは無いんだけどな〜。この親子と同じように葬儀場の角を曲がり、裏手を覗き込むと・・・・・いない。あの親子がどこにもいない。よ〜く見るとフェンスに取り付けられた扉は開いてる。
「あ、なんだ・・・ここ開きっぱなしだったんだな」
納得して僕も開きっぱなしの扉から団地の敷地内に入ろうとした時、「何か」が顔から手から足まで、べっとりと張り付いた。びっくりして思わず水溜りに尻餅をついたもんだからズボンはずぶ濡れ。雨が葬儀場の空調の室外機の上をタンタンタンタンタンタン・・・はねる。思わず指先で体中ひっかいてへばり付いていた「何か」を毟り取る。
心臓はバクバク、呼吸は滅茶苦茶に乱れていたように思えます。冷静になってみると、何のことは無い。開きっぱなしの扉にびっしりと張られた蜘蛛の巣でした。
さて、あの親子はどこへ行ったのでしょう、この扉を通らずに葬儀場の裏をまっすぐ進んでも
あるのは自販機ほどの大きさの配電盤だけ。袋小路ですよ・・・・
【完】
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