第十九話
語り部:黒板消し二級 ◆NiFxMXxz3c
ID:oArD26OTO
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旅館
気のきいた前置きができないのでいきなり話始めます。
小学校4年の頃、京都にある旅館に泊まった時の話だ。
従兄弟と仲がよかった僕は、従兄弟に誘われて旅行についていった。
僕達が泊まった旅館は山の頂上くらいにあって、凄く落ち着く雰囲気と凄く落ち着かない雰囲気の両方が出てた。
矛盾してるけど本当に。
それでも僕と従兄弟はテンション上がりまくりであんまり気にしなかった。
従兄弟『見てみ!モスラ止まってるモスラ!!』
俺『うわっ!この蛾マジでかいじゃんwww』
なんてバカみたいにはしゃいでた。
話は前後するんだけど、旅館に行く数か月前に初めて幽霊を見たんだ。自宅の二階に白い足だけが立ってるのを。それから霊感が付いたらしく頻繁に見ていたけど、子供ならではの無邪気な勇気というか好奇心で恐怖は乗り切ってた。(今ならびびって無理旅館に入った時も、キン○マが縮み上がるほど寒気がしたけど、旅館の人がスグに出て来たから気にしてる暇はなかった。)
旅館のおっちゃんの顔はよく思い出せないんだけど、嫌な感じじゃなく、凄くいいおっちゃんだったと思う。
その日旅館に泊まる客は僕達だけで、いわゆる貸し切り状態だった。当然のように騒ぎまくる従兄弟と僕。
お風呂でも従兄弟ははしゃいでたんだけど、お風呂で僕は固まってしまった。
だって明らかに湯船に三人入ってた。僕と従兄弟と誰か。
どんなに周りを見ても僕と従兄弟しかいない存在だけ分かる感じ。そのため早めに風呂を出たワケなんだけど、子供のくせに(せっかくの旅行を台無しにしちゃう)とか思って従兄弟のおばちゃんには話さなかった。
お風呂を出てトイレに向かうと、トイレの周辺は広いスペースになってて、卓球台が一つ置いてあった。
受付で話を聞くと、二十円で三十分卓球ができるそうだ。今思うと安過ぎる気もするけど気にせず借りたら、今日は貸し切りだから時間は気にしなくていいとの事。
そこから数十分、従兄弟と僕は卓球で遊んでいた。しばらく遊んでいると、突然ピン球が飛んで行ってしまった。当然ピン球を取りに行ったんだけど、ピン球が落ちてた所にやたらデカい絵がかけてあった。
物凄い悪寒がした僕は部屋に戻る気マンマンだった。
でも、振り返ったら従兄弟がいない。
怖くなった僕は部屋まで走って戻ったんだけど誰もいない。
訳が分からなくてとにかく廊下を走り回って全部の部屋を見て回ったが、自分が泊まっている部屋以外はドアも開かない。残っているのは一番奥、1015と書かれた部屋だけだった。
寂しくて泣きまくってた僕の耳に優しい声が聞こえて来た。
『こっちにお母さんがいるよ』
僕は一番奥の部屋に行く足を止めた。
突然涙が止まり、かわりに全身から汗が吹き出て来る。
こ の 部 屋 は 危 な い
僕がそう感じた直後、ドアから無数の真っ青な腕が飛び出して来た。僕ははじかれるようにその場を逃げ出した。
後ろを向くと、真っ青な腕の壁が迫ってくる。僕はずっと泣き叫んでた。初めて感じる異常なモノへの恐怖。なんでこんな事になったんだろう?
逃げながら頭をかすめた疑問が僕を助けてくれた。
(そっか!あの絵だ!!)
僕は遊戯スペース目指して走り、絵に手をついた。そこからは覚えてないから僕が体験したのはここまで。ここからは事件(?)の後の話。
従兄弟の証言
H(俺)がピン球を取りに行った時に突然絵をすり抜けて行ってしまった。
おばちゃんの証言
Hが絵の中に入ったとK(従兄弟)が騒ぐから絵を見に来たらHが倒れてた。
まだ泊まる予定だったが、僕達はその日の朝に旅館を後にした。
おばちゃんが帰ってから旅館について調べたらしい。(いわくつきかどうか)するとそこに旅館は存在していない、というか僕達が登った山自体が存在して無かったらしい。
旅館の名前は覚えてない。旅館のおっちゃんの顔も覚えてはいない………
あんまり怖くなかったかもしれないけど、体験した本人としては本当に怖かった。
余談だが私の霊感はその後どんどん強まっていったが、中学2年を境になくなり、心霊現象に会う事もなくなった。
しかし今でも大きな絵を見ると、背筋が凍る。
京都にはもう絶対に旅行に行かないと決めた僕でしたが、修学旅行で京都に行くことになり、しばらく鬱でした
-終-
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