第九十四話
語り部:404 ◆aWkNiL.XHM
ID:I/k+u63p0
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「北枕」
私は子供の頃寝相が悪い事で家族間で有名でした。
ある温泉宿に宿泊に行った時の事です。
祖父が車を運転して濃い霧のかかる山をゆっくりと昇って行く道でした。段々と上に行くにつれて前が見えなくなり、スピードを抑えて進みましたが途中で小学2年生になる従姉妹が
「トイレに行きたい」
と言い出したのですが、山の上でトイレはなく仕方なく道の脇に車を止めて少し離れた場所でしてくるように言われました。
始めは車から離れる事躊躇していたのですが段々我慢できなくなったのか決心したように離れていきました。
私たちはしばらく車内で待機していたのですが、突然従姉妹の叫びと泣きながら走ってくるのがみえて、叔母は慌てて従姉妹にかけよりました。
…しかし、泣いた理由をいくら聞いても従姉妹は青い顔をして首を横に振るばかりで決して答えてはくれませんでした。
宿には夕方頃に到着して、東側の窓から見える滝が綺麗だったので皆で眺めていました。
それから夕食を食べ終わり満腹、家族皆旅の疲れかすっかり眠くなってしまいその日は早々に寝ることにしました。
しきたりなどにうるさい祖母が、
「北枕はだめよー」
といったので皆で窓がわに枕を置いて就寝。
――――夜中、眼がさめた私は奇妙な物音がしていることに気がつきました。
『とん、とん、とん…』
『ぱちん、ぱちん、』
『ばちん、』
なにやら段々と音が大きくなっていきます。その音はどうやら窓側からしているようなのです。…とそのとき、窓が自分の左手に見えている事に気付き、そのあとに恐怖を覚えました。私はいつもの寝相の悪さで北向きになってしまっていたのです。
音はその時、
『ばちんばちんばちんばちん』
と間隔も短く、大きさをましていました。ふとんにもぐりながら頭の向きをいそいで戻すと、音は段々と消えていきました。
―――――――――――――――――
あとから聞いた話によると、その滝ではよく自殺者が出るそうです。
[完]
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