第九十話
語り部:黒影 ◆vi3yuFYKUs
ID:UDZ+PlcUO
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(夢の話)
悲しい夢を見ました。小さな子供が泣いている夢です。
その泣き方が何かを訴えるようなぐずった様な泣き方をしていたので、僕はしゃがみ込みその子に聞きました。
「どうしたの、迷子?」
するとその子は必死に首を横にふるのです。
「じゃあどうしたの?お母さんとはぐれちゃったの?」
子供は又首をふり否定します。そしてスッと僕の背後を指さしました。
瞬間僕の目に写ったのは、包丁を振りかざす男の姿でした。
自分の悲鳴で僕は目をさましました。慌てて身体を確かめ、どこも刺されていない事を確認すると、ため息をつきました。そして何気なくつけっぱなしのテレビに目をやると、朝のニュースで殺人事件が起きた事を知ったのです。
犯人はヤク中の父で、被害者はその子供。まさしく夢にでてきた彼等でした。
死んだ子供は僕に何を伝えたかったのでしょうか。苦しかったことを、悲しかった事を 伝えたかったのでしょうか。
[完]
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