第八十九話
語り部:高峰 ◆Seek1VG9hU
ID:IdQnVXNdO
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弟は小さいとき、夜中に目を覚ましては、鎖がずるずる引きずる音がすると言って、耳を押さえておびえていた。当時は自分もまだ十かそこらで、弟の尋常ではない血走った眼と、ふう、ふう、と荒々しく繰り返す息遣いが恐くて、弟をあやす母親の横で、布団の中に丸くなり、弟の聴こえる音が耳に入らないように両耳を塞いでいた。
あるとき、インスタントカメラを父親が買ってきたので、室内で撮り合いっこをすることになり、自分を撮ってもらったり、弟を撮ったりと、しばらく新しいおもちゃに夢中になっていた。
ひとしきり遊んで満足し、撮り終えた写真をまとめていたら、弟の写真に異変があるのに気づいた。
弟が映っているはずのその一枚には、弟の顔の部分と腕の一部が映っていなかった。本当にすぱっと、背景が普通に見えている。更によく見ると、弟の後ろにはその場に居るはずのない人の、剥き身の足や手まで見える。
気持ち悪くて、でも誰にも言えなくて、その写真は折りたたんで、こっそりゴミ箱に捨ててしまった。
あれから20ウン年。
弟の夜中の奇妙な行動は引越しと同時に影をひそめ、特に弟の身の上に怪異現象はなかったけれど、ちゃんとお祓いしてもらっておけばよかったなと、今でも心霊写真特集などを見ると思い出します。
[完]
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