第七十一話

語り部:ももちゅん ◆bxVFazo/xo
ID:IwXU1RsZ0

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「家出」

お恥ずかしい話なのですが、私の父と母が夫婦喧嘩をしました。

父は短気で子供っぽい所があり、車に乗って家を飛び出ていってしまいました。

いつも一日で帰ってくるので気にも止めておりませんでしたがその日は夜に出ていって朝帰ってくる半日コースで、普段より早い帰宅です。それにしては様子がおかしい。大の大人が半ベソです。

家出をして、車の中で野宿しようと、適当な場所に車を止めたそうです。私の家の付近は大変田舎で、街灯のない道が幾本もありました。父が車を止めたのも、そんな真っ暗な道を、少し離れた空地でした。父は座席を倒し就寝しました。

その瞬間。車の扉が開き、何者かが父の足首を掴みました。そして金縛り。

父は

「これはマズイ!」

と、心の中でお経を唱えていたそうです。

眠ってしまったのか意識を失ったのか、気がついた時には朝になっていました。車の扉は開いたままで、夢では無かったことを示しています。

そして……暗い時には気付かなかったのですが、周りは墓地。呼ばれたのかなんなのか、よりによって墓地に車を止めてしまっていたのです。

翌日、父と母は揃ってそこに墓参りに出かけました。

夫婦喧嘩は犬も喰わないと申しますが、霊はわりと喰ってくれるようです。

[完]
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