第六十二話
語り部:黒犬 ◆maNL6bv6dg
ID:a1X5y96bO
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あの日の跡
今も俺の家の仏間に残る忌まわしい跡…
俺が初めて心霊体験したのは16歳の時、家の仏間を閉めきって、絵を描いていた時だった。
夏の暑い昼下がり…描き始めて三時間程たっただろうか、俺の背中を冷たい手のようなものが上から下へと、ゆっくり撫でた。あまりの冷たさと、異様さで不覚にも ギャ っと声を上げてしまい後ろを振り返る………誰もいない…。
疲れてんのかな…
独り言をいいながら、絵を描き始めようかと前を向くと…見た事のないお婆さんが、チョコっと座っている。しかし…おかしい!
なんでこの老婆は、ふすまの方を向いて座ってるんだ??い…!耳が痛い…!急に耳の奥が耳鳴りと共に痛くなった。
その老婆は俺に背を向けて、ブツブツ言いながら必死にふすまを
ザリ…
ザリ…
と、上から下へと撫でている。そして、
「あー~。/;やた/。~>げん」
となにやら訳の解らない事を言うと俺の方にグリグリグリと首だけを動かし振り返った…
真っ黒だ…!!
この老婆…顔が何からなにまで真っ黒だ!!
その瞬間俺は意識を失った。
気が付くともう夕方で、母親に叩きおこされた。
一生懸命、意識を失う前に見た事を説明するがまるで信じて貰えない…
夕飯の支度をすると言って仏間出ようとした母親が
ギャーーー!
と、俺よりデカイ悲鳴をあげた!
家族があつまって来る…みんな目の前の光景に息を飲んだ…
先ほど老婆が座って手で撫でていたふすまの部分に赤茶色のシミがベットリついていたのだ。
血でもない。絵の具でもないネトネトした何か、不気味としか言いようのないものが…
祖父はそれを見ると
「触るな…ほっとけ…かまっちゃイカン…そのうち薄くなって消える」
とだけ言うと部屋を後にした。
結局、それが何なのか今でも解りません…
まだ消えてません…
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[完]
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