第五十四話
〜後編〜

「・・・・・・る・・・・は・・・ちん・・・・ま・・・・は・・・・・ちん・・・・」
「!」
「!」
「!」

「おい、やめろって言ってんのがわなんねーのかよ!!お前ら!!」

と*田が怒鳴った。

「俺たち・・・・・何にもしゃべってねーぞ。」
「?だって聞こえてきたぞ。かすかだが。ま・・・は・・・ちんって」

と*田は訝しげに話した。

「お前冗談にならねーぞ。神経質になりすぎじゃねーのか?」

と残りの二人が返す。

が、その時・・・・・確かに・・・・聞こえてきたのである・・・・・あの声が・・・・

「ま・・・・・る・・・・はっ・・・・ちん・・・・ま・・・・る・・・・はっ・・・・ちん・・・・」
「?」
「!」
「!」

「おい、もう帰ろうぜ。気持ちわりーよ。」

と*西が言い出した。その間も不気味で弱弱しい声は聞こえ続けていた・・・・・・・・・

「俺たちの後ろから聞こえてこないか・・・・この声・・・・」

と*合が言った。 「まさか・・・・・そんな・・・・」

三人はいっせいにトンネル出口へ走り出した!が、声は小さくなるどころかどんどん大きくはっきりしたものに変わっていった・・・・・

「ま・・・・・る・・・・はっち・・・・ん、ちゃ・・・らん、ちゃ・・・ちゃ・・・ちゃらん・・・・」
「まるはっちん・・・・まるはっちん・・・・チャラン・・・・チャラン・・・チャチャチャ・・・・チャランチャラン・・・・チャチャチャ・・・・」
「まるはっちん〜まるはっちん〜・・・・・チャランチャランチャチャチャ・・・・・・チャランチャランチャチャチャ・・・・」
「まるはっち〜ん、まるはっち〜ん、まるはっち〜ん」

「おい!俺たちの後を追いかけてくるぞ!!」
「もっと速く走るぞ!!」

彼らは更に走る速度を上げた。

「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」

声はますます大きくなってゆく・・・・・・

「もうすぐ出口だ!!」
「よっしゃあああああ!!!」

「逃げないで・・・・逃げないで・・・・どうして逃げるの・・・・逃げるな・・・逃げるな・・・・逃げるな・・・逃げるな・・・」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「逃げるな、逃げるな、逃げるな、逃げるな、逃げるな、逃げるな、逃げるな、逃げるなぁぁぁぁ・・・・」

「逃げるなぁぁぁぁ!!!!てめえらぁぁぁぁ!!!!」

と耳をつんざく怒号がトンネル内に響き渡った・・・・

三人が肝をつぶして振り返ると・・・・・十m程後ろにボォッと光っている人の姿が見えた・・・・・が・・・・・首が無かった・・・・・

「うわわわわわわっ!!!!」

三人が逃げ出そうとした、その時、ボォッと光っている人の手がすごい勢いで伸び、*田の肩をつかんだ。後ろに引きずられてゆく*田。

「た、た、助けてくれぇぇぇぇ!!!!」

が、残りの二人はすでにトンネルの外へ走っていった後だった・・・・

*田の叫び声を聞いた二人が振り返ると・・・・・・*田がトンネルの中へ引きずられてゆくのが見えた・・・・・*西が懐中電灯の明かりをトンネルに向けようとすると、明かりがフッと消えてしまった。

そして、二人は見た・・・・・ボォッと光っている人の手が*田の肩をつかんでいるのを・・・・

その「光っている人」の左手には何かがぶる下がっていた・・・・・

「う、う、う、うぎゃああああああああ!!!」

二人は腰を抜かした。人の生首だった・・・・・目と口をカッと開き、二人を見据えていた・・・・紛れも無く、*川の顔だった・・・・

二人は放心状態になった。トンネル内からは*田の叫び声と共に、

「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」

・・・と声が聞こえていた・・・・

「許してくれ、許してくれぇぇぇぇぇ!!!*川ぁぁぁぁ・・・・・・!!!!俺が悪かったぁぁぁぁ!!!」
「やめろぉ!やめろぉ!やめろぉ!やめろぉ!やめろぉ!やめろぉ!ギャアアアアアアアァァァァ!!!!」

それきり、声はピタッとやんだ・・・・・

しばらくして、放心状態になった*田がフラフラとトンネルから出てきた・・・・・・失禁していた・・・・・・結局、彼らはふらふらになりながらも、*田の家に行った。このトンネルから一番近い場所だったからである。

「あら、ずいぶん久しぶりねぇ。*合くん、*西くん。」
「どうもご無沙汰しております。お姉さん。」

疲労困憊ながらも二人は愛想笑いしながら答えた。

「俺、水飲んでくる・・・先上がっていてくれ。」

と*田は台所へ向かった。

二人は、2回へと上がっていった・・・・

さて、*田の部屋で、

「おい、あの時、どうしてたんだ?*田?」
「どうしたも何も無いって。あの気味の悪い化け物が俺を捕まえて・・・・トンネルに引きずり込んで・・・」
「で?」
「俺の周りをぐるぐる回りながら、まるはっちん、まるはっちん、まるはっちん・・・とか言って消えた・・・」
「いやぁ・・・えらいもん見ちまった・・・しばらく夢に見るなぁ・・・」
「お前ら、俺を見捨てただろ??」
「しょうがねーだろ。あの状況じゃあ。」
「まぁ、何とか逃げられたんだから。まぁ、よしとしようや。」

・・・・・と、その時、*田が言った。

「逃げられた?・・・逃げられる訳無いじゃん・・・・そりゃ無理だよ・・・」
「?」
「?」

「何言ってるんだよ?*田〜♪」
「・・・・・だって、だって、ボクハココニイルンダモン!!!」

と、向けた顔は*田の顔ではなかった・・・・・*川の顔だった・・・・トンネルで見たのと同じ・・・・

「ギャアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!」

階下のお姉さん、

「上が騒がしいわねぇ・・・・全くもぉ・・・・」

彼女は2階へと上がっていった・・・・・・・・・・*田の大きな声が聞こえてきた・・・・歌っているようだ。

「?????」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」
「ま〜るはっちん!チャランチャランチャチャチャ、チャランチャランチャチャチャ・・・まるはっち〜ん、まるはっち〜ん♪」

「ちょっとぉ、うるさいわよぅ。もう少し静かになさいよ。深夜なんだから。」

と部屋の扉を上げて・・・・・彼女はその光景に凍りついた・・・・・部屋の中は血まみれだった・・・・血まみれになった*田が部屋の中で踊っていた・・・・・・床には首を切られて血まみれになって死んでいる*西と*合が転がっていた・・・・

*田は彼女のほうへ振り返ると、

「ジャジャンジャジャジャン!!!マルハッチ!!!」

と叫ぶや否や、持っていた包丁で彼女の首を切り裂いた。

・・・・・飛び散る血・・・・・大量の返り血を浴び我に返った*田・・・・・・・

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

*田は未だに「隔離施設」から戻っていない・・・・・・

[完]
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