第四十五話
語り部:黒犬 ◆maNL6bv6dg
ID:a1X5y96bO
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育子さんの話。
これはオレの先輩から聞いた話。
隣街に、育子(イクコ)さんと、そのお母さんが住んでいました。母子家庭ながら、とても仲の良い親子で、はたから見ると、まるで兄弟のようだったそうです。
しかし、幸せは長くは続かず、育子さんが高校生の時お母さんさんが倒れ。病院に搬送されましたが、医者いわく長くはもたないとの事でした。
そしていよいよ母親の忌まわの時…
母「育子…貧乏でゴメンね…いつも一緒にいてあげれなくてゴメンね……愛してたよ…ずーっと愛してた……」
育子「イヤダお母さん!死んじゃヤダ!」
母「あんたが嫁に行くまでは生きていたかったけど…もうダメみたい……私の代わりに…このお守りを持ってなさい…開けずに…大事に身肌離さず持ってるんだよ……」
そう言ってお守りを育子さんに手渡すと、お母さんは静かに息をひきとりました
それから三年が経ち。育子さんは20になってました。お母さんが死んだ後も一人で頑張り、今では社会人です。
ある日の会社での飲み会で…
友人「ねぇ育子。いつも首から下げてるお守り何??」
会社の友人に聞かれて、育子はお母さんとの事を友人に話しました。
友人「そっかー………ところで、お守りの中身って何??」
母親から開けずに持ってろと言われたため、育子さんは一度も中を見た事がありませんでした。
友人「開けてみせてよー見たい見たい」
いつもなら断っていたでしょうが、お酒の力と好奇心にかられ、育子さんは中を開けてしまいました。
すると、中からは黒い紙が一枚………いや、よく見ると黒い紙ではありません………見えるか見えないか、凄く小さい字でビッッシリと…
イクコシネ
イクコシネ
イクコシネ
イクコシネ
イクコシネ
………
間違いなく母親の字でそう書かれていました。
育子さんは慌てて家に帰り、お母さんの仏前に泣きながら座りこみ
育子「お母さん……なんで……」
すると、今まで温かい微笑みを浮かべていたお母さんの遺影の顔が ニタァーっと口の両端を持ち上げ。笑ったそうです。
[完]
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