第三十四話
語り部:さら
ID:2ffpHmrE0
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見えない人
それはまだ勤め始めて間もない頃だった。
残業を終えた自分は先輩二人とエレベーターに乗った。
オフィスは最上階近くにあり、いつもは一階につくまでは何度か止まるのだがすでに時計は11時を回っており、今夜はノンストップで一階まで行くだろうと思ってた・・・。
ところが途中でふいにエレベーターが止まりドアが開いた。
そしてそこには一人の若い男が立っていた。
オフィス階で真っ暗な中にぽつんと・・・。
少し驚いたが幽霊ではなさそうだ。ところがその若い男はいつまでたってもエレベータに乗り込んでこない。
業を煮やして
「乗らないんですか?」
と声をかけると、男は
「ボクはいいんです・・・」
と答えた。何かおかしなやつ・・・と思いながらも閉のボタンを押すとエレベータは何事も無かったように降下を始めた。その時だ。
「おい、お前なに一人で喋っているんだよ!」
後ろに居る先輩の一人が怒ったように自分に声をかけてきた。
「え?だって止まってドアが開いた時若い男がたっていたじゃないですか」
「何言っているんだ。ドアが開いた時誰もいなかったぞ。お前一人が暗闇に向かって話していたんだ、冗談にしてもたちが悪いぞ」
先輩の言葉を聞いて自分は呆然とした。先輩は自分が先輩達をかついだと本気で怒っている・・・。
だが・・・・・今たしかに男が・・・いたじゃないか・・・!
と思った瞬間、男を見たときの不思議な違和感が何であったのかがわかった。
今は夏、それなのにあの男の服装は・・・ダウンのベストを着ていた・・・。頭には赤いバンダナ・・・
バンダナが流行ったのは何年前だっただろう・・・。
あの男はずっとあの場所に縛り付けられたまま動けないのだろうか。
[完]
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