第三十三話
語り部:高峰さん(代理)
ID:fHE6YFQe0
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中学のときの話です。
うちは親の仕事の都合で転校が多かったんですが、中2のとき、小1まで住んでいた土地へ戻ってきたんですね。
そこは持ち家で、離れている間は人に貸していました。越してきて庭を見ると、以前はなかった小さな祠が片隅に作られていました。特に気味が悪いとか、そういう悪い感じはしなかったんですが、どうして作られたのか不思議に思って親に尋ねてみたところ、はっきりと答えてくれません。屋内にも、トイレと、台所、神棚のある部屋に、どうもお札がはられていたらしいのですが、こちらも詳しいことは教えてくれない。
ある夜、自分の部屋で寝ていると突然金縛りがきました。初めてだったので、なんとか動かないものか身をよじったり、腕を動かそうとしたり。こりゃほんとに動かない、ダメだなぁ、と仰向けのままぼんやり思っていると、ふと、真っ暗なはずの室内の、丁度頭の斜め上あたりがほのかに明るいことに気がつきました。
オレンジ色の暖かな光が、ぼうっと揺らいでいる。あんなところに明かりの灯るものあったっけ?と考えていると、赤ん坊の泣く声がその明かりのほうから聞こえてきたんです。少しずつ大きくなったり、小さくなったり。
その波のような音を聞いているうちに睡魔が襲ってきて、目が覚めると翌日の朝でした。
後でよくよく親に聞いたところ、貸していた家族の奥さんが流産にあったそうで、庭の祠やお札は、その水子を慰めるものということでした。
それからなぜか金縛りに合いやすい体質になってしまって、思春期のピークの頃は難儀しましたよ。
[完]
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