第二十一話
語り部:影虎 ◆ufyC28b62o
ID:6hObzdE1O
【021/100】
「感じる」
友人と二人で、カラオケに行った時の事。
友人がトイレへ立った。次は私が行く予定だった。帰ってきたと思えば顔が青い。
「どうしたの、顔青いよ」
「ん…トイレ寒かったよ」
とりあえずトイレへ向かう。安いカラオケ屋はどことなく嫌な臭いがする。トイレは、とても綺麗だった。でも、何か空気が重い。さっさと用を足して出よう…そう決めて一番奥の個室へ。
…怖い。
怖い怖い。
気付いたら涙がぼたぼた落ちて、腰が抜けかけていた。なのになかなか用が足し終わらない。
やっと止まったので、ジーンズを上げるのももどかしく、トイレを飛び出した。
ベルトも締めずに涙を流しながら部屋に入った私を見て、俯いていた友人は顔を上げた。
「…おかえり」
「…ただいま」
「あっちゃん(私)…トイレ、怖かった、よね」
「うん…」
そのトイレで、レイプ事件があったと知ったのは四日後だった。
[完]
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