第十九話

語り部: ◆KrithSk2m6
ID:iHYwWtAM0

【019/100】

同乗者

編集のMは帰宅が深夜になることが多く、通勤に原付を使っていた。

クラクションを鳴らされる事がなぜか多い。ライトもついているし、30キロ平均でしか走っていない。

「なにしてんだ!」
「危ないだろ!」

通り過ぎる車から運転手が罵声を浴びせてくることもしばしば。

こりゃ「霊」だな。Mはそう思い立って知り合いのツテを頼り、霊能者に原付を見てもらうことにした。

「いますね。後輪にからまっています。女性です。しかも美人」

走行中だと、周りからは女性を引きずっているように見えるんです。霊能者はMにそう伝えた。

捨てた方がいいですよ、とアドバイスされたがMの方にも代わりを買う金がない。事故るわけでもないのでMはその原付に乗り続けた。

そしてつい最近。やはり深夜のこと、物凄い形相で警官に止められた。

「どういうつもりだ!事故ったらどうする!」

怒鳴られ内心(またか・・・)と思いつつ原付を路肩に止めた。

「あ、あれ?」

近寄ってきた警官はきょとんとした顔になった。Mはやれやれとした表情で警官に言った。

「女の人が引きずられてるの見たんでしょ。もう見えないでしょ?止まると見えないらしいですよ。からかってるわけじゃないんだけど、幽霊らしいです」

しかし警官の返事はこうだった。

「いや・・・・5人乗りしてるように見えたんだけど・・・・」

「・・・は?」

増えていたのだった。

[完]
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