第十三話

語り部:里中美子 ◆UIiQ5N7wO6
ID:6OoJ2e6jO

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一昨年亡くなった近所のお爺ちゃんが、幼い頃に体験した話。

「悪い子は、お化けにさらわれるぞ」

と、よく大人は言う。

モモンガア、や、モモンジイ、という悪い子供をさらう妖怪の名を、どこかで聞いた事のある人も多いかもしれない。お爺の田舎では、それを「子取り」と呼んでいた。

それは、稲刈りの終わりの季節だった。

お爺が友達と連れだって田圃道を歩いていると

「子取りが来たぞぉ〜!」

という声がする。

見れば、大きな袋を持った、身長二メートルはあろうかという黒い影が疾走してくるではないか。

やばい、逃げろ!!隠れろ!!

子供達は、稲刈り後の田んぼの中に飛び込み、草の影に身を潜めた。

子取りは、お爺たちには気付かず、走っていってしまった。

お爺は確かに見た。

それが、本当の妖怪だったのか、まぼろしだったのか。お爺が亡くなった今。知る術は、無い。 [完]
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