第二話
語り部:本当にあった怖い名無し
ID:0x7Rvhd10
【002/100】
記念撮影
時刻は午前0時ちょっと過ぎ。
4人の若者を乗せた1台の車が、カーブのキツい山道を走っていた。この道の先には“出る”と噂されるトンネルが口を開いて待っていた。でもこの道以外、彼らが家に帰れる道はない。
そのうちの一人が怖いもの見たさで、
「せっかく来たんだから、写真でも撮っていかないか?」
と言い出した、渋る奴もいたが、皆でその余興にのった。
トンネルの前で撮影し、再び車に乗り込む。まだ先は長い。皆早く帰りたかった。が、運転席に座る若者が車を発進させようとしない。後部座席の3人は運転席の若者に向かって、
「どうしたんだよ、早く帰ろうぜ」
と急かした。すると若者は泣きそうな顔でこう言った。
「…オレの足元見てくれ、たっ…頼む」
彼らが運転席の足元を覗き込むと、車の床からにょっきり生えた、筋張った2本の手が、運転席の若者の足を掴んでいたのだ。手の甲には青筋が浮かび、若者の足に食い込んでいる、
驚いた3人は若者一人を車内に残し、車から転がり降りてもと来た道を闇雲に走った。
1時間ほど後に、3人はトンネルの前に1人残した友人のもとへ戻った。だが、そこには車そのものがなかった。もちろん運転席の若者も車ごと姿を消していた。
徒歩で峠を下った3人は捜索願を出し、山狩りもされたが、今もって若者の行方はわからない。
[完]
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