投稿者:うなじ
タイトル:緑色の少女
僕は霊が見える。
しかし、見える年とそうでもない年がある。おそらく、霊感の強い人ならわかっていただけると思う。
僕には友達がいる。すごく仲のいい友達だ。名前はノブ。小学生からの付き合いだ。ノブは霊感が強く、そして霊に対する興味も強かった。僕が見えているものはすべて見えていた。そして、僕には聞こえない声が聞こえていた。そのことを初めて知った出来事を今から書こうと思う。
中学2年の時だった。この年は、やたらと動物霊を見る年だった。しかし、今から書くことは動物霊のことではない。人間のだ。
本題に入る前に、霊について少し触れておこう。
霊は、暗い所や寂しい所にいると考えられがちだが、僕が今まで見てきた霊のほとんどが人の集まる場所か水場にいた。暗い夜道などで見ることはほとんどない。たまに動物霊か浮遊霊のようなものを見ることはあるが、人間の姿はしていない。腕であったり、顔らしきものであったり、はたまた光であったりと様々だが。最近よく見かけるのはコンビニだ。昼夜問わずにいる。生前よく足を運んでいた場所だからなのか、と考えさせられる。
話を本筋に戻そう。
中学2年の秋だった。中間テストが終わり、次の日が休みだったので、僕とノブを含む3人で友人宅に泊まりに行った。
友人の家はなんの変哲もない家だった。裏に墓地があるわけでも、呪われた防空壕があるわけでもなかった。ただ立派な家だったことは確かだ。小高い丘になっている閑静な住宅街で、今でこそ大きな道路が通っているが、当時は車もほとんど通らない所だった。
寿司とケンタッキーフライドチキンに夢中になった。食後は、やはりゲームだ。マリオカートをした覚えがある。その後友人のお父さんに銭湯に連れて行ってもらい、帰ると布団が敷いてあった。
各々好きな場所を選ぶ。決まらずジャンケンをする。場所が決まり布団に入るがおとなしく寝るはずがない。中学2年といえば性に目覚めたばかり。自然と話はその方向へ行く。皆で真ん中の布団に集まり、ありったけの知識を振り絞り、思いつく限りのエロ自慢をし合った。
今思うとバカなことだが当時は楽しくて仕方がなかった。
ふと後ろを見たら女の子がいた。
緑色の光に当たっているような緑色の女の子がいた。
お化けだ。
そう思った。当時僕は霊や幽霊と呼ばずにお化けと呼んでいたのだ。
女の子はベッドに腰掛け、足をぶらぶらさせながら楽しそうに話を聞いていた。
悪いお化けじゃない。そう直感した。
顔を友人の方に戻すと、僕の挙動には気づいていないようで、話は続いていた。それもそのはず。僕が幽霊を見ていたのはわずか1、2秒のことだ。
その頃には自分には見えて、人には見えないものがあることを理解していた。そして、見たことを人に話すと嘘だと思われることも実感していた。
それからどれくらい話しただろう。バカ話も終わり、全員が沈黙した。1分ほど間があり、唐突にノブが怖い話をしちゃると言いだした。友人二人は喜んだ。
ノブは静かに口を開いた。
「ある家に緑色の女の子がいるんだ。」
僕はぞっとした。知っていて言っているのか、偶然なのか。しかし話に割って入れる雰囲気でもなく、僕は枕を強く抱きしめた。
「何人かで話をしていると現れ、ただ聞いているんだ。嬉しそうに。」
「でも話が終わると『もっと話して』とねだってくると。」
なんやそれ、怖くないやん、と友人が言う。僕は目をつぶって布団に潜った。僕の真横に女の子がいるからだ。
「『話してくれんなら一緒に帰ろう』って言いよるとよ。ものすごい顔で。なぁ、うなじ。」
ん?なぁ、うなじ?僕に言ってるのか?
驚いて布団から出た。目の前に真っ赤に膨れ上がった顔があった。
直感は外れた。悪いお化けだった。
次の瞬間、僕の中の何かが叫んだ。
「帰りなさい!」
知らない人の声ではなく、ましてや女の声でもなく、紛れもなく僕の声だったが、赤い何かは緑色の女の子に戻り、悲しそうに消えた。
「ノブ、見えとったとや?」
「お前さっき、あれ見よったやん?その後お前に話しかけよったばい。」
「ノブは声も聞こえるったい。」
「お前、聞こえてなかったんや。だいぶしつこかったけどな。」
ちょっとまて、お前ら嘘つくな、と慌てる友人を尻目に、僕はノブが自分と同じ特徴を持っていたことが嬉しい反面、自分には声が聞こえないということにちょっと悔しい気持ちだった。
この後ノブとは親友になり、いろいろな体験を共にすることになる。
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