投稿者:26
タイトル:俺の知り合い
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日が影って来たと言うのに蝉時雨の降り止まない中、俺は山中にある民家の前に居た。
外界から離れたこの山奥に一人で住んでる変わり者が居る。彼女の名前は「ミユキ」どう言う字を書くのかは知らない、本名か如何かも実は怪しい。歳は十五六って所か、実は年齢も良く解らない。
「おーい、居ないのか?」
まあ、あれだ、いつも通りだ。返事の無い返事なのだ。
扉に手をかけたらガラガラと音を立てて開いた。相変わらず玄関の鍵は掛かって居ない。
「入るぞ?」
こんな辺鄙な場所では空き巣に遭う事も無いのだろう。第一此処の家では盗るに足るモノは無いに等しい。
いや、決して物が無い訳では無い。寧ろゴミのように有る。然し、彼女の持ち物は金になるのか怪しい物ばかりなのだ。
何を生業にしているのか、毎日何をして過ごしているのか爽然解らない。俺がここ訪ねる時は大抵、彼女はこうやって畳に突っ伏して眠り痩けている。足で脇腹を小突いて彼女に俺の訪問を知らせた。
「…うん? 何だ、もう朝か?」
「阿呆、もう夕方だ」
「それより桃、持って来た」
眠そうに目を擦っていた彼女だが、桃の一言を聞いて一気に覚醒した。と言うか持って来た桃に飛びつ
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るな」
「如何やって持って来たんだ?」
いつの間にか、彼女は桃を平らげ空になったその皿を指で持て遊びながらゆっくりと語りだした。
「現実に無いモノを夢に求めるとする。火の色をした絵の具でも、このお皿でもそう。唯々欲しいと思って居さえすればいい、そうするととソレが夢に出て…ちょっと、机の上の煙草取って」
灰皿を探しながら彼女は「後は夢から持ち出せばいいだけ」と付け足した。
「その持ち出し方を知りたいんだが」
「御尤もな意見」
くすくす笑いながら彼女はそう言って煙草に火を着け、煙草の箱をこっちに投げて寄越した。如何やら「お前も吸え」と言うことらしい。
「どーも」
「桃も美味かったし、御礼に話してあげるよ。さてと、何処から話そうかねぇ」
いつの間にか辺りはすっかり暗く、蝉に変わり夏虫が鳴いていた、今宵の月は一段と明るい。
今夜も長い夜になりそうだ。
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