投稿者:はなお

タイトル:映画館で
これは何年か前、雨の映画館であった話。私自身に霊感は全くないと思っていたのですが、もしかしたらあるのか?と思い始めたキッカケでもあります。

友達と二人、会社帰りに待ち合わせをして映画をみることになりました。ちょっと寂れた駅前にある小さくて古い映画館です。

話題作、感動のラブストーリーだったのですが、その日は暴風雨。最終の回ということもあってか、十人前後しかおらず、前後左右に人は座りませんでした。

右の列に座ったのは、私たちと、離れた前に三人ぐらい。ほぼ貸しきりです。映画に集中してみることが出来ました。

そのうち、ほろりときてしまい、ハンカチを出そうと足元に置いた鞄を開きました。(大きな鞄だったので、椅子にはおけず、足元にあった。)

屈み込んで荷物をあさっていると、視界にチカチカと光るものがありました。覗き込むと前の席の下、手を伸ばせば届きそうな位置に、黒い二つ折りタイプの携帯電話が落ちているのが見えました。音はしてないが、どうやら着信しているようです。

前の回の落し物だろう。拾っておいて後で係員に渡そうと考え、手を伸ばしました。瞬間、友達にその手を蹴られました。

驚いて顔をあげると、友達は凄い顔でいいました。

「ティッシュ頂戴。鼻水出た」

携帯よりこっちが先だと、私はボロボロ泣く友達にティッシュをやり、もう映画が佳境に入っていたので終ってからにすることにしました。

明かりがついて、私はすぐに携帯を探しましたがありません。確かにみたのに。

おかしいなあと思いつつ、係員の追い出しにあい、そこを出ました。

飲んで帰ろうということになり、居酒屋に入り、私は手を蹴られた事を思い出しました。文句を言うと、

「だってさあ、前列いないはずなのに背持たれに指が見えたんだもん。錯覚かなあって思ってたら、はながゴソゴソやってるし。つられて下みたら指みたいな白いのが動いて見えてさ」

友達曰く、白い指みたいなものが動くとこに、私が手を出そうとしたので蹴ったと。友達の席からは携帯は見えなかったそうです。

普通なら、暗闇に光がチカチカしてたら気配ぐらい感じそうなものですが…。

友達はかなり見える人で、

「あのまま、手を突っ込ませてたら、知らない誰かと映画館で握手だね」

とか、笑っていました。

彼女のおかげで多分、助かった。でも言いたい!手を蹴るな〜!そっちのが怖かったから。
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