投稿者:まいこ
タイトル:帰宅
あたしのお父さんから、聞いた話。。
お父さんの友人で、タクシー運転手をしているAさん。ある日の夜中、Aさんがいつも通りに車を流していると、とある病院の前で、パジャマ姿の若い女が手を上げてAさんの車を止めたそうです。
「こんな時間に気味が悪いなぁ〜‥」
と思いつつも、無視するわけにもいかずその女を乗せたAさん。
「どちらまで行かれますか??」
「○○町までお願いします。」
○○町は、その病院から差ほど遠くなく、昔からある普通の住宅街。てっきり、
《お寺まで‥とか墓地まで‥》
と言われるんじゃないかと思って内心ドキドキしていたAさんですが、○○町と聞いて少しばかり安心したそうです。車を走らせながら、Aさんはミラー越しに
「失礼かも知れんが、こんな時間に何しに行かれるんかね?」
と聞いてみると、
「どうしても家に帰らないといけない用事が出来てしまって、看護婦さんに無理言って少し外出させてもらったんですよぉ。こんな時間に、しかも病院前でパジャマ姿の女なんてね‥運転手さんもビックリされたでしょ?ほんとにすみません」
と、女は申し訳なさそうに笑いながら、言ってきたそうです。これは、幽霊なんかじゃないな‥普通の人間だ!そう確信したAさんは、ホッとして、女とたわいもない話をしながら車を走らせ、○○町に着いたそうです。
「この辺かい?」
「はい!あの明かりのついている家です。」
もう真夜中。住宅街といえど明かりのついてる家はその家一軒だけ。
明かりのついた玄関の前に車を止めて、金額を告げると
「運転手さん、すいませんっ!お財布病室に忘れてしまったみたいで‥すぐ家からお金取ってきますね。ほんとにすいません;」
と、女が言うので
「あ〜、良いよ!おじさんここで待っとくから、取っておいで。急ぐこともないから!」
そう言って、ドアを開けると女は降りてAさんに向かって
「ありがとうございます」
と深々と頭を下げてその家に入っていったそうです。しかし、いくら待ってもその女は戻ってこなかったので、仕方なく女の入った家のチャイムを押すと、一人の男性が出てきたので、病院の前から女性を乗せて……と延々と説明すると、いきなり涙を流しながら
「その病院は△△病院ですか?二十歳くらいの女のこでしたか?髪の毛は二つ結びで、パジャマはピンク色の花柄やなかったですか?」
確かに、いま乗せてきた女は、その男の言う通りの女だ。Aさんは、きょとんとしながら
「その通りですけど‥」
と言うと男は泣きながら
「ありがとうございます。良ければ上がって行って下さい」
とAさんを自宅に入れたそうです
入ると、男の奥さんがいて話を説明すると、奥さんもボロボロ涙を流し、Aさんに深く感謝したそうです。意味が分からぬまま居間に通されました。どうやら誰かが亡くなったらしく、棺桶があり祭壇が作られていました。祭壇にある遺影を見てAさんは息を飲みました。
そう、遺影に写っていたのは紛れも無く今Aさんが乗せてきた女。男と奥さんはその女の両親だそうです。奥さんが全てを話してくれました。
「美紀(仮名)は△△病院に入院してました。家が大好きでいつも帰りたい‥と言ってたんですが、体調が優れずに帰れなかった。けど、ここ最近少しですが体調が良くなってきたんで、担当医と相談して一日だけなら‥と言う事で外泊の許可をもらえ、美紀もすごく喜んでたんですよ。それが今日だったので、朝迎えに行って、外泊の準備をしていると美紀の容体が急変して‥あっという間でした‥。でもあなたのおかげで、美紀がこの家に帰って来る事ができました。美紀も喜んでると思います。ありがとうございます」
話を聞き終えたAさんは涙を流しながら美紀さんの遺体に手を合わせ、代金は受け取らずに帰ったそうです
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