投稿者:水瓶座

タイトル:遊泳禁止の理由
遊泳禁止の浜でひどい目に遭った塾長御一行には、更なる恐怖体験が待ち受けていました。

その日はまんじりともせず夜を明かし、翌日は人込みの中でおとなしく海を満喫した塾長とその仲間、計5名。日程的にはもう少し滞在して遊んでも良かったそうですが、あまり良い気もせず、夕方には帰路についたのだとか。

そんなにとばすわけでもなく車を走らせていると、たまたまパトカーに遭遇、停車を命ぜられたそうです。一体何だと路肩に車を停めると、警官がやってきて

『定員オーバーはダメだよ』

とたしなめられました。

塾長たちはわけがわかりません。

『5人乗りセダンに5人で乗って文句あるかよ!』

と車から降り、警官にくまなく車内を調べさせました。もちろん誰も隠れてなぞいません。警官は首をひねりながら謝り、ぽつりと

『確かに6人乗ってるのを見たんだがなぁ…』

と漏らしました。

これじゃまるでベタな怪談だな、と苦笑しながら再出発。しばらくして、腹ごしらえでもしていくかとファミレスに寄りました。しかし席に通されると、出されたお冷やは6つ。いよいよ笑えなくなり、すぐさまファミレスを飛び出して、一目散に地元まで帰ったそうです。

時はすでに夜。昨日の髑髏と今日の『見えない6人目』のおかげで、皆ひとりになるのを嫌がったため、塾長の家でその晩を飲み明かすことになりました。

アルコールが入ると皆気が大きくなり、恐怖心も薄れてきました。そこで誰からともなく

『まださっきの6人目がいたりして』

という話になったそうです。塾長は自分の家なので、ふざけんな!と思ったそうですが、せっかく持ち直し始めた皆のテンションを下げるわけにもいかず、我慢して話に付き合っていました。

するとひとりが

『オイ!6人目!いるなら出てこいや!』

と叫びました。つられて皆も出てこいコール。しかし何も起こらず、笑い飛ばしてその話題がおしまいになろうとしていたとき。突然部屋の明かりが消えました。一気に凍り付く塾長たち。ブレーカーが落ちたのか?違います。

次の瞬間、テーブルの上のビールの空き缶がものすごい音をたててへこみ、投げ付けられたように部屋の壁へと吹っ飛んでいったのです。

そこからはポルターガイストの嵐。空き缶だけでなく、灰皿、煙草、クッション、雑誌など部屋中のものがとてつもない勢いで飛び交います。

塾長たちはもうパニック。皆叫びながら必死に謝り、身を縮めていました。すると、パタリと怪現象はおさまり、何ごともなかったように明かりがつきました。

荒れ果てた部屋でへたりこむ5人。言葉もありません。まだ6人目がいるのです。そう、今もここに。抜群に霊感の強い塾長も、どういうわけか見ることのできない6人目が。

塾長は次第に腹がたってきました。何で俺らにつきまとうんだ、何をしたって言うんだ、そもそも6人目はどこから拾ってきたんだ、いい加減にしろ!

『ふざけんな!ポルターガイストなんかじゃなくて真っ向から来やがれ!』

塾長が叫びました。

すると、いきなりザーッ!!!っと雨が降ってきました。大音量でTVの砂嵐が流れているような、ものすごい雨音です。

塾長だけがマジギレ状態で6人目の出方を窺います。残る4人はもう完全に震え上がってしまい、我先にと塾長の家を飛び出していきます。しかし玄関のドアを開けて、皆は更に腰を抜かしました。凄まじい雨音が嘘のように、外は月夜なのです。

ということは、これは雨音ではない…。もう音の正体を突き止める気力もなく、皆は塾長を残してそれぞれの家に逃げ帰っていきました。

塾長が我に返ったときには、すでに雨音は止み、散らかった部屋にひとり取り残されている以外は何もなかったとか。

以上が後日談です。この話はこれまでで、髑髏の話の後ではインパクトも薄れてしまいましたが、塾長の体験はこんなものでは済みません。またそのうち投稿します。
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