投稿者:とん

タイトル:障子の硝子
この話は、あるスポーツ部員達が合宿先で体験した出来事。

なんでも地方へ合宿へ行くのにいろいろと金銭的な事情があったのかな?都合良く合宿先に部員の知り合いがいて大きな寺の坊さんやってて、部員全員が寝泊まり出来るスペースを用意できるらしく、顧問や部員達もそこの寺に泊まることに賛成した。

そんで夕方まで他で練習して夜には寺に戻った。

部員達はすっかり疲れいて、みんな一斉に眠ってしまった。顧問は何処か別の場所で寝たんだと思う。



そしてすっかり夜も更けた頃、一番廊下側で眠っていた一人がある物音に目を覚ました。

聞耳をたててみると誰かが廊下を忙しそうに小走りで往復してる音がしてたそうだ。

目が覚めてしまったそいつはしばらくその音を聞いていたのだが一向に止まないのだ。

『変だな。用があればどこかしらの部屋に入ってくはず…』

そう心の中で呟いた。

そしてその時そいつは思い出したんだって。自分が一廊下に近いことを。それとこの部屋と廊下を隔てている障子の上と下、数十センチが硝子なのを。

親切に声を掛けてやるのも面倒なのでこっそり下から廊下を覗いて見ることにした。

硝子の先には真っ暗な闇のなかで不気味に光沢を放つ廊下が横切っている。ふと向こうからその足音が近付いてきた。

『いったい誰なんだぁ?』

そう思いながらも暗い廊下に眠い目を凝らしていたその時。足音が目の前に来たときそいつは震え上がった。



足音は通りすぎたのだが肝心な足が見えなかったのだ。



その恐怖にすかさず布団を被りデタラメに祈ったが足音は尚も廊下を往復し続けた。





ふと気が付くと既に朝になっていた。どうやら眠ってしまっていたらしい。あの足音も聞こえなくなっていた。

『なぁ、昨日の足音…』

と切り出したのは別の奴だった。

するとみんな口々にその音を聞いたと語った。どうやら部屋にいた全員その音を聞いていたらしいのだ。

そこでそいつは昨日見た(見えなかった)ものを告げた。

『じゃぁ、いったい正体は何なんだ?』

て事で真相探しが始まった。

みんなが何だかんだ盛り上がっているとずっとうつむいて黙っていた一人が口を開いた。

『…俺、見たんだ…』

すかさず他の部員が指摘した。

『何言ってんだよ!姿が見えなかったって聞いてなかったのか!?それにお前、部屋の一番奥で寝てたろ!?』

するとそいつはゆっくりと顔をあげた。ただならぬ雰囲気にみんな沈黙した。

そいつは更に視線を上にあげてゆっくりと呟いた。

『あそこ…』

みんな一斉に部屋から廊下の天井に視線を向けた。

『…何だよ?何もないぞ?』

『…違うよ。』

そいつが言ったのは廊下の天井ではなく、障子の上部分に張られた硝子だった。



そして続けた。





『…昨日の夜ね…』



『…あそこから…』







『…でっかいお婆さんの顔が部屋を覗いてた…』
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