投稿者:水瓶座
タイトル:廊下の奥から。
わたしは小学校高学年〜高校生くらいの頃、霊感のようなものがありました。見えはしないけれど、聞こえないはずの声や音が聞こえたり、おかしな予感が的中したりすることが多かったんです。そんな時期の皮切り(?)となった体験を。
確か小学校5年生のときだったと思います。
わたしの実家は平屋で、子ども部屋は家の角っこにありました。ドアを開けると、左手すぐに玄関、その先はずっと縁側です。右手にはダイニングキッチンのドア、仏間の障子、客間の障子。そして目の前は廊下でした。
その廊下は、突き当たりを右に折れてさらに廊下が続いています(客間を囲むように廊下があるんです。わかりにくいですね、すみません。)。でも突き当たりには昔から大きな箪笥が置かれていて、通り抜けることはできませんでした。
ある晩、子ども部屋からダイニングキッチンへ行こうとドアを開けると、真っ暗な廊下の奥、箪笥の辺りから、誰かの声がした気がしました。
怖さより不思議さの方が勝り、しばらく子ども部屋のドアのノブを掴んだまま、闇に溶け込んでいる箪笥を見据えていました。しかしそれっきり何の音沙汰もありません。
空耳か、と気を取り直して、ダイニングキッチンへ向かおうとしました。が、一歩踏み出したとたん
『●●ちゃん』
と聞こえたのです。
●●とは、わたしの名前です。しかし家族は、ふたり姉妹の長女であるわたしを、名前ではなく『お姉ちゃん』と呼びます。今でこそわたしを名前で呼ぶ両親も、当時は『お姉ちゃん』と呼んでいました。ですから、家の中でわたしの名前が呼ばれるはずはないのです。
歩み出した足は再び止まってしまいました。怖くはなかったです。だって、なんだか知っている声だったから。
ダイニングキッチンへ行くと、わたし以外の家族が集まってテレビを見ていました。確認しましたが、誰もわたしを呼んではいませんでした。
そして家族と一緒にテレビを見ていて、思い出したんです。さっきの声は、間違いなく父の妹、わたしの叔母のものでした。
これをきっかけに、様々な体験をするようになったのですが、それはまた今度。
余談ですが、叔母は健在です。しかし新興宗教にどっぷりハマッており、なぜかわたしばかり異常なほど勧誘してきます。今はそっちの方がよっぽど怖いです。
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