投稿者:水瓶座
タイトル:某音楽大学
わたしが3年前に卒業した都内某音楽大学には、とにかく『出る』という噂がありました。今回はわたしが体験した中からひとつ。あまり怖くないかな?
2年生の終わり頃、実技試験を間近に控え、夕方ひとりで練習していたときのことです。うちの大学は都心にあるせいか、敷地が点在しており、校舎もいくつもに分かれて建てられていて、その日は中でも一番古い校舎の教室を取って練習していました。
さんざん練習して、辺りは真っ暗、7時頃だったと思います。閉館時間が近付いてきたため、戸締まりを始めました。かなり広い教室で、ピアノのある手前側しか使っていなかったのですが、念の為教室の奥の窓まで鍵を確認しに行きました。
固定された机と机の間を奥に向かって歩いて行くと、なんとなく背後に誰かの気配を感じました。なぜか
『あ、友達が入ってきたな』
と思ったのを覚えています。よく考えれば、間もなく閉館する校舎の教室に、ノックもなく友達が入ってくるはずがないのですが、そのときはどういうわけかそう思ったんです。
気配はどんどん近付いてきます。音もなく、しかし素早く迫ってきます。もう数歩で教室の一番奥に着く、というところまで来たときには、首筋に吐息がかかりそうなほど近くに…むしろ襟足に顔を埋められたような気さえして、たまらず振り返りました。
そこには、大人の上半身くらいの大きさの、黒い靄のような塊がありました。
声も出せず、呆気にとられていると、ソレはものすごい速さでわたしの横をすり抜け、教室の奥の壁にぶつかるようにして散り散りに消えていきました。
今ではその校舎は取り壊されて、立派な新校舎が建っているそうです。結局ソレが何だったのかは判らず終いでしたが、振り返るのがあと少し遅かったら、一体何が起きていたのだろうと思うと、今でもちょっと怖くなります。
この大学での話は他にもあるので、それはまた今度。
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