投稿者:トマト
タイトル:助けてくれた声
怖い話じゃなくてどちらかというと不思議な話。
私は家庭が複雑で特に母親と折り合いが悪く19の頃から独り暮らしをしてた。でも弟とは今時珍しいくらい仲良しで毎週のように私が住んでいる家に泊まりにきてくれていた。多分実家にいたくないってのがあったんじゃないかな。
そんなある日夜の8時頃公衆電話から電話がかかってきた。弟が
『母ちゃんが怖い』
と泣きながら訴えている。私はすぐに弟を駅まで原チャで(違反だけど)迎えにいき家に帰ってすぐに鍵をかけ戸締まりを確認した。そして一番奥の部屋に弟を座らせた直後…
『ピンポーン』
と呼び鈴がなる。誰だろうこんな時間に?セールスかな?私は女の独り暮らしのくせにすぐドアを開けてしまう癖があってその時もそうしようと鍵に手をかけた。その時、
『開けちゃダメ!!!』
誰かの声が聞こえた。弟の声でもない、でも優しい声…。
私はハッと扉から離れて
『…どちらさまですか?』
とドアの向こうに声をかけた。
『…母ちゃんだよ…』
案の定母親だった。いつものようにドアを開けなくて本当に良かった。もしドアを開けていたら…考えるのも恐ろしい。
その後だいぶ扉越しに押し問答していたが結局母親は帰っていき私は弟を守ることができた。
今でも不思議に思う、一体あの声は誰だったんだろう…。そしてもしあの時原チャで迎えに行かなかったら、もし戸締まりを確認しなかったら、もし私が家にいなかったら……
すべては偶然なのか…。それともあの声の見えない導きだったのか。どちらにしろ声の主に本当に感謝している。ありがとう。
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