実家への帰り道

俺も投下させて頂きます。霊感0だと思ってた俺が始めて心霊体験をした時の話です。

5年前、当時東北のパチンコ屋で働いていたときの話です。パチンコ屋の二階が住み込みの寮になっていて店長と俺を含め合計8人程で共同生活をしていました。

仕事と言っても、そのパチンコ屋ってのは僕の実家の家業で当時相当なDQNだった僕は少年刑務所を出所したばかりで中卒、前科持ちでまともに就職できる訳も無く嫌々ながらオヤジの命令で修行と称して家業のパチンコ屋に収容されました。

11月も終わりの頃だったと思います、仕事終わりに他の従業員とタバコを一服していると事務所の電話が鳴りました、店長が電話に出たんですが電話での対応から社長(オヤジ)からの電話だとわかりました。

店長が電話を切ると俺の方を見て

「おい、M(俺の名前)今から一緒に地元に帰るぞ」

と言い出しました。深夜12時を回った頃です。

俺は

「はぁ?今からっすか??何で??」

と切り替えしたんですが店長が言うにはそろそろ雪が降りそうだから社用車のスノータイヤを今から取りに来いとの事でした。

地元までは車で片道4時間以上はかかります。俺と店長が明日休みだという事を計算しての呼び出しです。

俺は

「うわぁ〜又始まったよ、あの糞オヤジ・・・」

と愚痴ってはいたんですが店長を兄貴と慕っていた僕は久しぶりに二人でドライブするのも悪くねぇなと思い納車したての車の慣らしもかねて仕方ない行くかな〜?位の感じでした。

予断になりますが店長が兄貴とは言ってもゲイな関係では無く俺と店長の関係は幼馴染と言うか義兄弟と言うか・・・何と言うか・・・

店長はお袋の友達の子供なんですが両親が幼い内に事故で亡くなってしまい身寄りが無くなってしまったため養子にした訳では無いんですがオヤジが引き取り自分の子供として育てたんです。

俺とは年が10歳離れていますが血の繋がりが無いにしろ兄弟として育ちました。店長は苗字こそ違いますが俺の弟、妹も皆何の違和感も無く家族として生活しています。

家業がパチ屋と言う事で気が付いている人も多いと思いますが僕は在日韓国人3世です。

話を再開します。

家業のパチンコ屋は全国にチェーン店を展開する規模で僕は店長の言うことなら聞くだろうと言う事で東北のあるチェーン店に出向させらていました。

社用車の車はインチアップさせたピレリーの特殊な扁平タイヤを履いていたため東北の片田舎にあるオートバックスなどには取り扱いが無く実家まで取りに行く羽目になってしまいました。社長が視察に来た再に乗り回すだけの車なので正直、激面倒なだけの話しです。

着替えて準備を整え店の駐車場に出たのが1時ごろだったと思います。店長が先に駐車場で待っていました。

俺を見ると

「おいM俺に運転させろ」

とニヤニヤしています。

俺は

「あ〜また何か良からぬ事を思いついたな」

と内心思っていましたがその「良からぬ事」がこの旅の醍醐味なため俺もニヤニヤしました。毎度、若かった僕らは世直し天誅と称し無茶苦茶な犯罪ギリギリで楽しんでいたのです。

でも今回ばかりは今までのバチが当たったんだと思います。

車に乗り込みイギニションキーを回すと思い切りエンジンを吹かしました。当時乗っていた車が68年型のカマロです。レストア仕立てで新品の5000ccV8エンジンを積んでいたため物凄い爆音です。

一斉に周りの民家の明かりが灯り犬は吠え始めるわでかなりの近所迷惑だったと思います。

ミッションをローにブチ込みホイルスピンをしながら走り出しました。

タイヤの摩擦音で車内は会話ができる状態では無かったんですが僕は

「シゲ兄(店長の名前)まだ慣らしの最中だってばよ!!」

と叫んでいました。

夜中なのにサングラスをかけているシゲ兄の口元は緩みニヤニヤしています・・・。

国道に出た所で何か音楽でもかけるかなとCDチェンジャーをいじっていると急にハンドルが右に切られコンビニの駐車場に入っていました。

「おい、飲み物とタバコ買って来い」

と言われ小銭を渡されました。

ドアを開けて外に出たタイミングで

「後、子供が喜びそうなお菓子もな」

と子供が喜びそうなお菓子ってのが引っかかりましたが言われた通りタバコとコーヒー、適当にお菓子を見繕って車に戻りました。

車が走り出し小腹が空いた僕はコンビニの袋からお菓子を取り出し食べようとしたんですがシゲ兄にいきなり頭を小突かれ

「それはお前用じゃねぇ」

と言われ

「じゃぁ誰が食うんだよ?兄貴お菓子なんて食わねぇだろ??」

と言うと

「これからお参りすんだよ、お供え用だバカ」

とシゲ兄

「こんな夜中にお参りって・・・何のお参りだよ・・・??」

と不安になったんですが・・・

しばらくの沈黙の後

「水子・・・」

と言い放ちました。

俺はその時点で嫌な予感がしてたんです・・・このシゲ兄という男は地元ではDQNの親玉の様な男でしてハンパじゃない遊び人なんです・・・水子の数で野球チームが出来るほどで歩く生殖器と呼ばれていました。

「この間この辺ドライブしてたら水子供養してるトコ見つけてさその内行こう行こうと思ってたんだわ〜」

とさらっと言うのですが俺としては意味がわかりません・・・

「うわぁ〜ありえねぇ・・・」

と思い時間も時間だし後日に付き合うから今は止めにしようと説得したんですが思いたったら吉日、これからのドライブの安全祈願もかねてお参りすると言って聞きません。

そうこうする内に巨大な寺に到着しました。 回りは鬱蒼とした林に覆われ時間帯も時間帯なんでかなり良い雰囲気です・・・

車を降りて入り口のほうへ向かうと案の定、鉄柵がかまされており中には入れないようになっていました。

「ほら、もう閉まってるじゃんよ入れないから後日にすんべよ」

と言ったんですがシゲ兄は無視・・・鉄柵をよじ登る気マンマンです・・・

「マズイって・・・不法侵入だぞ・・・通報されたらどうすんだよ!!」

と言ったんですが

次の瞬間にはヒョイっと鉄柵を乗り越えてました。

「早くしろ」

と言われ一人で待ってるのも怖すぎるので仕方なく僕も鉄柵を乗り越え境内に侵入しました。

ずらっと並んだ墓を横目に進んで行くと境内の奥に水子地蔵と書かれたお堂が見えます。お堂に入りお供えのお菓子を備えると賽銭を投げ拝みました。

僕は早くこの場を立ち去りたい一身だったんですがシゲ兄の方は

「お前ら俺を守れ」

とかなり身勝手な拝みっぷりでした。

お参りを済ましシゲ兄はかなり満足げな表情で車に乗り込み地元への道を急ぎました。

俺はこの時点で心霊スポットだとか怖い話が全く駄目なタイプでかなりビビッていたんです。地元への道中、悪乗りしたシゲ兄は火葬場の真下に有るトンネルで車を止め記念撮影を始めたり海沿い道路を走っていた時には自殺の名所である崖に寄って、また記念撮影です。

そんなこんなで地元まで後1時間チョイと言う所まで来ました。

山道を抜けて走っていると街灯もほとんど無く薄暗い中を走行していました。順調に走行していたんですが路肩に人影が見えました。一瞬ドキッとしたんですがすれ違いざまに見た人はスクーターを押す爺さんでした。

俺はこんな山の中、早朝からバイクでもぶっ壊れたんかな?と思っていたんですがシゲ兄が

「今の見えた?」

と変な質問です。

「見えたって何よ?スクーター押した爺さんだろ?」

と言うと・・・

「あ〜あ、見えちゃった??マズイな〜ちょっと悪乗りが過ぎたかな?」

と訳の分からん事を言い始めたんです。

俺は冗談で俺をビビらせようとしてるんだと思ったんですが懐をまさぐり塩の入ったパケ袋と数珠を取り出し俺に渡しました。

書くのが遅くなりましたがシゲ兄は所謂、見える人なんです。普通、見える人と言うと心霊スポットは避けて通るし自ら危険に首突っ込む様な事はしないのが普通だと思うんですが・・・この人、自ら喜んで突っ込んで行くタイプなんですわ・・・

「とりあえずヤバイやら塩舐めて数珠握り締めておけ」

と言われ言われた通りに塩を舐め数珠を握り締め訳もわからず「南無阿弥陀仏」と唱えていました。

そうすると

「あーーーーーーキタキターーーーーーー!!」

とシゲ兄のテンションが上がりました。その瞬間にサイドミラー、バックミラーetcが塗られた様に真っ黒になり視界が奪われました。

「ウオォーーーーーーーーーーー!!」

と叫ぶ俺にニヤけた表情のシゲ兄が運転席側のサイドミラーを指差します。恐る恐る指差された方向を見ると・・・サイドミラーに女の物と思われる手がぶら下がっています。

手首から先だけの手がぶら下がっていたんです・・・・・

俺は

「ぎゃぁぁあぁーーーーーーーーーーー!!」

と叫びシートにうずくまりました。

「シゲ兄・・・何これ・・・?」

と震える声で聞くと・・・

「ん?魔界だ」

とサクッと返答がありました・・・・

そして

「多分、死にはしねぇから大丈夫だ」

と言うのですが・・・恐怖で泣きそうになりました。

どれ位時間が経ったのかは分かりませんが

「もう抜けたぞ」

と声を掛けられ顔を上げると朝日が昇り始め、車の異常も無くなり見慣れた町並みが近づいていました。

恐怖でかなり力んで震えていたためか体が硬くなっていました。安堵感からか全身の力が一気に抜けた瞬間に握っていた数珠が手から落ちたんですが・・・ 紐が切れてバラバラになって車内に散らばりました。

タバコを取り出し火を付けようとするとシゲ兄が

「ビビった??」

とかなりニヤけた表情で聞いてきたんで無視してやりました。

「そんなに怒るなよ〜」

とか声をかけてくるんですが反応する気力も有りません。

実家の近所のコンビにで道中撮った写真を現像すると言ってカメラを現像に出し実家に帰ったんですが。

早朝6時前に誰も起きて無いと思い静かにドアを開けるとお袋が玄関で仁王立ちで待っていました。

「あんた達、何処寄ってきたの??」

と烈火のごとく怒り砂かけババァのごとく塩を投げてきました。

うちのお袋も代々巫女をやっていた家系の人間でかなり霊感が強い人で寝ていたら夢に祖父さんが出てきて俺らがヤバイと言うのを伝えに来たと言うのです。それから一晩中拝んでいたと言う話でした。

居間に正座させられながら道中の一部始終を話すと散々激怒され近所の寺に連れていかれました。

6時頃でしょうか、朝のお勤めをしていた住職が俺たちを見るなり

「この悪ガキ何連れて来た!!ちょっとそこで待っとれ!!」

と言うと井戸から水を汲み俺たちにぶっかけました。

着てるもん全部脱いで白装束に着替えろと支持され言われるがまま本堂に連れ込まれました。説明も前置きも無しに木の棒で方を殴打され火をガンガンに炊いた前でお経を唱え始めました。お経に合わせて俺たちの体がビクンと反応しはじめひどい頭痛と嗚咽に襲われました。

そんな事が2時間近く続いたと思います。だんだん僕たちの体の反応も無くなってくると住職に思い切り背中をブッ叩かれて除霊?は終わりました。

ぐったりした俺達のかわりお袋が一部始終を説明しはじめると普段温厚な住職が烈火のごとく怒り初め延々と説教されました。

この住職は全国的にも有名な人らしくかなり位の高い坊さんみたいです。イタコの様な事をして亡くなった方と話ができる力があるらしいんです。僕らは子供の頃から近所と言う事もあり顔見知りでもありました。

40年以上無人で荒れていた寺を一人で一ヶ月以上ほとんど不眠不休で払い収め安置したとバァさんから聞いた事があります。住職いわくオフクロが気が付いて拝んで無かったら俺ら死んでたかも知れんとの事でした。

まぁそんなこんなでどうにか無事に一眠りしてスノータイヤを回収して帰路に着いたんですが・・・帰りに又事件です・・・

早朝現像に出した写真を回収して見てみたんですが・・・夜中に撮影したはずの写真が朝になってたり・・・火葬場の写真には髑髏が写り込んでたり・・・もう本当に死ぬほど洒落にならない経験でした・・・

帰りの車中でシゲ兄が

「結構面白かっただろ?」

とニヤニヤしながら聞いてきたので思いっきりぶん殴ってやりました
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