憑いてきちゃうよ

5年ほど前、学校や会社の備品(蛍光灯とかね)を配達するバイトをしてた。1日10件ほどを車でのんびり回る楽なバイトだった。

ある日、いつものように小学校に配達に行ったら、用務員のおじさんが

「この備品は体育館の倉庫にいれておきたい

って言うから、二人で荷物抱えて体育館に行った。

その日は夏休み中だったので学校に児童は居なかった。体育館もシーンと静まりかえっていた。

倉庫は舞台の上手(かみて)から下手(しもて)に抜ける地下通路にあった。

10年ぶりぐらいに小学校の体育館の舞台に上がり

『なつかしいな〜。舞台こんなに低くかったっけ?』

などとキョロキョロしていた。

そのとき視線を感じてふと天井を眺めた。すると舞台の天井に架かっている橋(お芝居のとき紙の雪とか降らす所)から、低学年ぐらいの水色の服を着た女の子がこちらを見下ろしていた。

『なんであんなところに女の子がいるんだ?』

と、不思議に思いながら見ていると、用務員のおじさんが

「あ〜見ない見ない。あんまり見ていると君についてきちゃうよ」

と、言って地下通路の倉庫の方に歩いていった。

・・・俺についてくる!?

なんか背筋に寒気がはしり、俺は急いでおじさんの後を追った。

俺が地下トンネルに降りたときには既におじさんは倉庫に自分が運んできた荷物を入れていた。俺はおじさんのところまで駆け寄っていった。するとおじさんは、

「とりあえず荷物入れよう。・・・そこまで降りてきてるけど無視だよ無視。どんどん近づいてきちゃうからね」

俺は入ってきたのと反対側の地下通路の入り口に目をやった。そこにはさっき見た女の子がぼーっと立ってコチラを見ている。

そりゃもー怖くて怖くて…ガタガタ震えながら荷物を倉庫に詰め込み、おじさんに寄り添うようにして体育館を後にした。

用務員室でコーヒーを飲みながらおじさんが話しだした。

「君にも見えたか?大体の人が見えないんだけどね」

と笑いながら言った。幽霊なんですか?と聞くと

「よくワカラン。ワシがここに赴任してきたときからあの姿でいるんだ。初めてあの子に体育館で会った時にワシ声掛けてしまったんよ。どーしたのー?ってな。そうしたら懐いてしまったのか、ワシの周りにずーっといるんだよ」

そう話している時に一瞬チラッとおじさんが俺から目線を外して俺の後ろを見た。俺は反射的に振り向こうとしたら、おじさんがそれを止めた。

「見るな・・・え〜・・・あれだ、もう帰ったほうがいいんじゃないか?」

それからの数日間、あの女の子が憑いて来てるんじゃないかとビクビクしながら過ごしたが、女の子を見ることは無かった。

あの時、用務員室で後ろを振り向いていたらどうなっていたのだろう
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