ザクロ

先日うちの営業所の所長から聞いた話。ベロンベロンに酔っ払いながら聞いたので所々補間しながら書いていく。

所長は昔、結構やんちゃしていて、飲〇運転、〇法侵入、8〇3との対峙などなど数えればきりが無いほどの悪行?をくりかえしていたそうな。

そんなやんちゃで怖いもの知らずな所長でも1つ、本気で恐怖した事があったそうな。

所長が若かりし頃、仲間何人かで夜釣りをしようという話になり、まだ夜も明けきらぬ間に家を出発したんだと。仲間たちとも合流し現地に到着。そこは渓谷みたいな所で、道路の路肩に階段があってずっと下っていくと河川敷になっていて、石とか岩がゴロゴロしているんだと。

まだ春先だということ、日も昇らぬ早朝ということもありやたらと寒かったらしい。そこで何人かはその場に待機。残る何人かは原付に乗って、薪が大量にある場所まで向かったんだと。

そこまでの道は1本道で、途中曲がり角はない。またその道は最終的にはドンつきで道は途切れているとの事。

しばらく進むと廃車当然の車がその一本道の路肩に路駐していたらしい。しかもエンジンはかかっている様子だったそうだ。

所長たちは

「なんでこんなところに車が??」

という風に不思議に思ったらしい。というのもここに来るまでの間にいくつもポールがあり車は進入しにくくなっていたらしい。またさっきも書いたけどこの先は行き止まり。この道路も舗装しているが、道路周辺はに木々が生い茂り車が走行できるような道はないとのこと。

でもよく夜釣りに来る人は居たのでこの車も夜釣りをしに来ている人なんだろう、ポールもうまくよけてここまで来たんだろう、とすぐにそんな違和感なくなったんだと。

んで所長たちがそこを通り過ぎるとき、自然と運転席に目がいったそうな。

そこにいたのは目がイッてるオッサン。そのとき所長は直感的に

「クスリでも極めてんのかな?」

と思ったらしい。そういう知り合いを何人も見てきたらしいがそういう感じの雰囲気だったそうだ。

他の人たちもその運転手に気がついたようだが、あまりに寒くさっさと薪を拾って戻りたいということでそのままほったらかして奥に進んで行ったらしい。

薪を拾っている最中、先ほどのオッサンの話題で盛り上がっていたそうな。生きているか亡くなっているか賭けにまで発展していったらしい。本当、不謹慎だねぇ。ちなみに所長は亡くなっているほうに賭けていたそうな。

んで帰りしな。そのオッサンが生きているかどうかを確かめるべく、所長が率先してその場所まで飛ばして見に行ったらしい。するとその場所には。。。



何も無い。



後から来たメンバーのうち、生きていると賭けた者たちは大喜び。車は戻っていったんだろうということで所長をはじめ負け組はがっかりしながら皆が居る場所に戻っていったらしい。

戻る途中、ある一人の原付に異常が起こりエンストしてしまったらしい。しかしその人は賭けの勝ち組。ちとむかついていたのでその場に放置してみんなが待っている場所へ戻ってきたらしい。

その場に待機していたメンバーに先ほどのオッサンのことを説明し、賭けに負けてしまった旨を説明し、ところで・・・という感じで、先ほど車が通っていっただろう?とその場のメンバーに尋ねたらしい。

すると

「いや?何も通れへんかったぞ??」

と予想外の返答が。

んな馬鹿な。一本道だからここを通らないはずが無い。絶対に通ったはずだ。いや、通っていない。その押し問答が続いたそうだ。

すると後ろから原付のエンジンの音が。どうやら先ほどエンストした人が戻ってきたようだ。ふと皆がそちらの方を見ると。



その人が乗っている原付の真後ろのシートにウ〇コ座りした状態でさっきのオッサンが居るではないか!!



所長たちは恐怖で固まってしまい、微動だに出来なかったらしい。そのオッサンをのせた原付が結構近づいてきても見えていたらしく、またメンバー全員が見たらしいので見間違いではないらしい。



所長は言った。



「そのときはまだマシやったんやけどな・・・俺らのもうすぐ傍まで近づいてきたとき。そのオッサンが急に前に乗り出したかと思ったらな。」



「額ぐらいまで口を大きく開けて。運転しているやつの頭、喰ってん。」



その瞬間。原付は所長たちの場所で止まらずそのまま通り過ぎ、道路を外れ、河川敷に転落していったそうだ。



そこで所長は大きくため息をつき、話は唐突に終わってしまった。その運転していた人がどうなったのかとか、その後何かあったのかとか、何も言わず、その場で横になりいきなり寝てしまった。





しかし帰り際。所長は言った。





「ぐっちゃん、知ってるか?人の千切れた痕ってザクロそっくりやねんで。」
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