死体を見た話

稲川淳二の怪談で、溺れ死んだ友達の死体を見てビックリするって有名なのが有るじゃないですか。ただの死体と思ってたら・・・ってヤツですが。 そんな怪談など知らない頃に聞かされたちょっと気味の悪い話。 小学校の時の副担任のK先生は、登山が趣味で大学生の頃はよく仲間と出かけていたそうです。K先生の授業は授業中の雑談、いわゆる“脱線”が多く中でも怪談はクラスでも人気が有りました。今なら授業中に子供に怪談話など、とんでもないと怒られるかもしれません。 K先生が仲間と登山に出かけた時、転落事故に遭遇したそうです。K先生達は現場に近かった為に、一時的に山小屋に収容された転落死した人に焼香していこうという事になりました。 山小屋に入ると、救助隊らしき男達がブルーシートを被せた荷物の前で話し込んでいます。その荷物の前に、お線香が有りましたので (ああ。遺体は既に運び出されたんだな) とてっきり思ったそうです。 すると救助隊に何やら頼み込んでいる人が居ます。狭い山小屋ですから、会話が自然と耳に届きました。 「とにかく顔を見てやりたい」 と言う事故死した人の仲間に救助隊は 『今はちょっと・・・』 と答えている様でした。 『亡くなった方も準備が有りますし』 と救助隊が言います。 何の事だ?と思っていると、説得された様で 『それじゃ、こちらです』 と言って救助隊は仲間の人をシートを被せた荷物の前に案内しました。 シートをめくると登山靴が見えました。 (遺品かぁ。可哀相に) と思いましたが妙です。 普通は靴など並べるならば、玄関に置いておく様な形で立てて置くはずです。まして遺品でしょう。それが靴底をこちらに見せた形で伏せてあるのです。 (ちゃんと置いとけよ) と思いながら見ているとソックスが見えました。 (おや?) と思うとズボンが見えます。それは登山靴を履いた死体の足だったのです。足はうつ伏せに寝かせて有るようでした。登山靴の向きで分かります。 (うわぁ。足だけ見つかったのか、酷いなこりゃ) とK先生は思ったそうです。始めは事故死した人のリュックサックかと思った荷物がなんと死体の足だったとは。そう思った瞬間、仲間の人が更にシートを外したのを見てゾッとしました。 みると、ひっくり返った両足の上に今度は死体の顔が乗せてあるじゃないですか。仲間の人は涙を流していました。 (それにしてもこんな扱いって有るのだろうか) と思いました。 死体の足を寝かせて有るのもおかしいし、さらにその太ももに顔を乗せるとは。しかも顔の向きだって逆じゃないか?頭をこっちに向けるか?一体どういうつもりなんだろう、と思っていると警察が担架を持ってきました。 警察は仲間の人がお祈りを終えるのを待つと、シートを剥がしました。 シートの下には腰のところで二つに折れた死体が有ったそうです。海老ゾリじゃないですけど後ろに向けて完全に畳まれた感じの二つ折りの死体。 死体ですから顔をやはり上向きにしないとダメだったのでしょう。一旦うつ伏せにして寝かせると、腰から折れた上半身が上を向くようになります。そうやってブルーシートの下に置いてあったそうです。
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