追いかけるピエロ

数日前に変な夢を見たんだ。

小学校へ続く通学路を一人で歩いているんだけど奇妙なくらい静かなんだよ。田舎の学校だったんだけど、いつもは五月蝿い虫の声とか一切しないし畑仕事しているじいちゃんばあちゃんも誰もいないの。俺だけが一人てくてくと歩いているわけ。

しばらく俺は誰も居ない道を一人歩いていくんだけど、ふと視線を感じて振り返ると、遠くに、ほんと遠くに小さな人影が見えたんだ。俺は嬉しくなって来た道を引き返そうとすると、その人影は全力で逃げていくわけ。

仕方ないから俺はまた通学路を一人歩く。しばらくして振り返ると、また遠くに人影が見える。さっきよりは少し近くに。まぁそれでも十分遠いんだけど。で、やっぱり近づこうとすると逃げていくわけ。

しばらくその繰り返し。歩いて、振り返って。近づこうとして、逃げて。振り返るたびに少しづつその人影は近づいてきてんの。何回か繰り返してやっと気付いたんだけど、そいつはピエロだったんだ。マクドナルドのドナルドみたいな感じ。てかそのもの。

俺はもともとピエロが苦手だったから、滅茶苦茶怖くなって、

『追いつかれたら殺される』

なんて考えたわけ。

でもまぁ夢の中の不思議なんだけど、何故か走れないんだ。足は一定の速度を保ちながら学校へと動く。

振りかえらなきゃいいのに、首は勝手に後ろを向いて、目はピエロを探す。振り向くたびにピエロは近づいていて、振り向くと一目散に逃げていく。その繰り返しをしながら、ゆっくりと俺は学校へ近づいていったんだ。

学校まであと少し。

少しづつピエロが迫ってきてはいるけど、この調子ならピエロに追いつかれる前に学校に到着できる。俺は安堵感に包まれた。

学校の正門の前で、俺はまた振り向いた。これが最後の振り向きだな〜とか考えながら。

俺の目が捉えたのは、一目散に逃げていくピエロじゃなかった。そのまったく逆。

こっちに物凄いスピードで向かって来てんの。腕思いっきり振りながら。足思いっきり上げながら。

で、なにより顔が怖かった。怒りに震えた顔でも、必死の形相でも無かった。物凄い笑顔なんだ。凄い嬉しそう。ずっと我慢していた大好物を、やっと頂ける。そんな顔。

俺はやばいと思って、学校へ全力疾走するんだけど、正門の丁度まん前で両肩をがしっと捕まれた。

殺される。

そう思って振り返ったら、ピエロは笑顔でこう言ったんだ。

「三度捕まえたら、殺す」

数日前見た夢は2回目。1回目は小学校の頃に見たんだ。昔のことだったんで久しく忘れていたんだけど…。

3回目は何時になるのか…。
⇔戻る