ハトコの話

おれのハトコがいわゆる見える人なんだが、そいつの話をしようと思う。

これはうちの母親から聞いた話。

小四のころ、よくハトコは学校から家へまっすぐ帰らず、寄り道をして友達と遊んでから帰った。当然帰りは遅くなり、母親に叱られて、家の蔵に閉じ込められてしまったそうだ。

しばらくするとハトコの泣きわめく声がする。家に聞こえるほどだったらしいが、母親は出さなかった。でも、騒ぎを聞き付けた隣のじいちゃんがハトコを倉から出してくれた。

そのハトコの様子はひどいものだったらしい。蔵の二階から落ちたらしく顔や足に怪我を負い、泣きわめき、嘔吐をする。そして極めつけは手形だった。ハトコの腕、足にくっきりと手形があったそうだ。背中にも。

ハトコの家は家族仲が悪かった。そのため、というか普通に考えれば虐待の疑いがあるということで、公共機関も乗り出してきたらしいが、そんなこともなく、蔵にハトコ以外の誰かがいた痕跡があるわけでもなく(警察にも来てもらったらしい)、それにハトコは蔵で何があったのか絶対に言わなかった。今も謎のままで、聞いても教えてくれない。

ハトコはそれからと言うもの、しきりに何かいると言っては怖がるようになった。黒い子どもが見えるらしい。精神的にもまずかった。カウンセラーにも行ったらしいが、ハトコは何があったのか絶対に言わない。しまいには喘息になってぶったおれた。

家庭環境が家庭環境だっために、ストレスが爆発したのではないかと、霊的なものは考えに入れてなかった(認めたくない?)らしいが、やっとお払いに行って言われたのは

「もう手遅れ」

べったりと何人も子どもがひっついている。手を出したらこっちが危ない。蔵に閉じ込められていたものがハトコに取り付いた。蔵にはまだまだいるから、ハトコを少しでも長生きさせたければ、絶対に近寄らせるなと言われたらしい。

これも始めて知ったことだが、ハトコの蔵はひいじいさんが死ぬまでは、定期的にお払いをしていたということだった。死んでからは一度もしていないようだった。何があるのか、何があったのかは誰も知らない。ハトコなら、なにか知っているかもしれないが。

ハトコ家族はしばらくして祖父母と別れて引っ越した。ハトコは今でも元気に生きている。喘息は治らず、よく体調をくずしているが。

推測だが、これがおそらくハトコが見えるようになった原因だと俺は思っている。そしてハトコと一緒にいると、俺はよくおかしな体験をするようになった。まとめられれば投稿しようと思う。

今でも、ハトコの腕には色が違うところがある。

「足も残ってるよ」

というハトコの服装はいつも露出が低い。

…の割にはよく泳ぎにいくそうだが。
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