危険はあなたの側に

さん(女)はフラフラと夜道を歩いていた。少し酔っている。電車の中でも吊り革に捕まりながらウトウトしていた。

A(気持ち悪い…飲み過ぎたかな。早く帰ろう)

道はAさん以外誰もいない。 と、前方から男が歩いて来る。すれ違った。

A(え…?)

後ろに気配を感じる。街灯の下に来た。Aさんの影とそれと重なるようにもう一つの影。

A(今、すれ違った男が、後をつけてきてる…)

鳥肌がたった。手をのばせば届く距離に、いる。走りだすことも出来ずに歩き続けた。深夜の住宅街は静まり返っている。

A(どうしよう交番も無いし)

結局、Aさんは自分のマンションの前まで来てしまった。タクシーが止まっていてちょうど客が降りるところだった。

A(同じ階に住んでる人だ!)

親しいわけでは無いが何度か挨拶をしたことがある。物腰の柔らかい初老の紳士だ。

A「助けて下さい!」

Aさんは走った。紳士は何事かとびっくりしている。

A「あの人変質者です!ずっとつけてくるんです」
男「冗談じゃない!俺はあんたを守ってやったんだ」
A「はぁ?」
男「背中見てみなよ!背中!」

紳士が「あ〜」と安心したような声をだし、

「上着を脱いでごらんなさい」

と言う。Aさんは上着を脱いだ。真っ白い上着に、“レイプ可”とマジックで大きく書いてあった。Aさんは真っ赤になって二人にペコペコ頭をさげた。

男が去り、Aさんと紳士はエレベーターに乗った。

A「すみません、ご迷惑かけて」
紳士「いや、何もなくてよかったよ」

紳士は微笑む。Aさんは持っていた上着を見た。

A「でも、こんな事するなんて世の中、頭のおかしい人が多いですね」

エレベーターはまだつかない。

紳士「そうだね、気をつけなさい」

その直後Aさんは脇腹に痛みをかんじた。脇腹に鋏が刺さっている。

紳士「私も頭のおかしい人側の人間なんです。気をつけなさいと言ったでしょう」

Aさんは倒れた。紳士は少し考えてから、Aさんのブラウスの背中に血で“切断可”と書いた…
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