心霊版咄嗟の一言
その日、俺の携帯に高校時代の同級生で今も付き合いのある数少ない友人から電話がかかってきた。何か深刻な悩みがあるそうで、家に来て欲しいとの事だった。
初め一人で行くはずだったのだが、運悪く俺の隣で話しを聞いていたバイク友達のうまい棒(あだ名)が電話の声を聞いて
「この子は可愛い!」
などと言い出し(声だけなのに…)一緒に行きたいと言い出した。
俺は絶対無理だろうと思い(女の子の部屋に野郎を入れたくなかった)その友達(ここでは輪廻としておく)に電話してみたらアッサリとOKだった。人数がいた方が心強いらしい。
そしてうまい棒の車で、輪廻の家まで向かい呼び鈴をならすと本人が出てきた。少し痩せたようだったが元気そうなのには少しホッし、うまい棒と軽く挨拶を済ませ部屋へと案内してくれた。
うまい棒が先に意気揚々と部屋に入ったのだが、直ぐに俺の所に引きかえしてきた。
棒「俺は人の趣味をとやかく言う筋合いはないが…凄いな。」
何が凄いかと言うと、輪廻は大の人形マニアで(フィギュアではない)ぬいぐるみやらフランス人形やらが所狭しと部屋中に飾られているのである。そして輪廻が大事そうにベッドに横たえている人形これこそが彼女が輪廻たる由縁の人形。映画の輪廻に出てくる人形そっくりの、彼女が愛してやまない20年物。
そしていよいよ本題だ
輪廻「実は…最近新しいお人形さんを買ったんだけど、その日から変な事が起こりだして…。」
うまい棒「本当にヤバそうだな…あれだろ?」(奴の指は輪廻人形に)
輪廻「違います。このお人形さんなんですが…。」
輪廻が見せてきたのは、まぁ古いと言えば古そうないわゆるアンティークドールだった。輪廻の言葉で書くと読み手が少々イラッとくるかもしれないので略して書くと、ラップ音が凄い、誰か居るようなきがする、金縛りに会うetc…でも怖くて捨てるに捨てられない。両親が帰ってくる明日の昼まで無理を承知て一緒にいて欲しい、との事だった。
まぁこんな人形ようお前の人形の方がよっぽど怖い。と、言ってやりたいがヒスを起こすので口が裂けてもそんな事は言えない。俺は二つ返事でOKした。
その後半ば引き気味のうまい棒は
「明日むかえに来る!」
と、そそくさと帰ろうとしたが輪廻曰く一人でも多い方が心強いそうで、俺が男だがいいのか?と訪ねても居てほしいの一転張りだ。俺はついてきたお前が悪いとうまい棒を繋ぎ止めた。
そしてその夜、輪廻が眠った後…俺とうまい棒は人形の前に居座った。コイツが何かするなら見届けてやろうと思ったわけだ。
一時間たち…二時間たち…鼻歌で長渕を歌っていたうまい棒が寝てしまった深夜二時…例のラップ音が聞こえてきた。ピシッ、コトッ、に混じってタタタタッなど何処からするのか分からない音が微かに聞こえてくる。
ありがちだな、などと思っていると次は輪廻がうなされ始めた。しまいには涙を流しながらウォウウォウだのイイァだの訳の分からない事を言い出したので、これはまずいと思いオイ!オイ!と声をかけるが震えるだけで目を開けない
そうこうしているうちにうまい棒の方が異変に目を覚ました。
どうした!と駆け寄るうまい棒をしりめにホホを叩いてみるがやはり駄目。
俺「ヤバい、震え方が普通じゃないオイ!手伝え!」
うまい棒「ザメハ!!!」(マジ)
しかし輪廻には効かなかった!とツッコミを普段は入れるとこだが、今は状況が状況なだけにうまい棒をシカトして俺は人形を壁にたたき付けた。無我夢中だったのでとっさに投げつけたが、それが吉と出たのか輪廻の震えはとまり10分後くらいには目を覚ました。輪廻は寝ている間の事はよく覚えていないそうだ。
翌日、その人形は供養にだすことにし、三人で寺まで行ったのだが人形を輪廻が差し出す際、人形の手の部分が服に絡まりなかなか取れず仕方なく服の一部を切ったのだが、切った瞬間に手はほどけ一体何に絡まっていたのか分からなかった。しかし、その日から輪廻の家では怪奇は起こらなくなったそうだ。
帰りの車の中で俺はうまい棒にザメハ!ザメハ!と言い続けてやった。
本人曰く
「俺も必死だった」
そうだ。
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