マネキンじゃなくて

そんなに怖い話じゃないけど。

俺の学校は五年生になるとキャンプがあったんだよ、山のキャンプ地に学年で行って二晩泊まるの。で、最初の晩飯にオリエンテーションで取った材料でカレーを作ることになったのでも、ほらカレーって材料入れて煮込んでる間は暇じゃない、それで皆で暇だなって言ってファイナルファイトごっこして遊んでた。皆ハガーになっちゃうんだけどさ。

そしたら友人の一人が

「少し離れた林の奥に小屋が見えるから探検しよう」

って言い出すの、皆暇をもてあましてたしちょっと面白そうだからってんで先生の目を盗んで懐中電灯持って林に入ったの。

で、林道を真ん中ぐらいまで歩いたときに木の根元に誰か立ってるのが見えた。初めは先生に見つかったのかと思ったんだけど、何か変だった。

ちょうど木の影に体が半分隠れる感じで立ってて細かいところは見えなかったんだけど。林道は真っ暗なのに明かりを持ってる様子もないし、体を横にくの字に曲げてて妙な姿勢で頭の部分も妙にひしゃげてて、変なシルエットだったんだ。なんで誰かが

「マネキンが捨ててある」

って言い出したの、それで俺らは皆マネキンだと思い込んで石やら木の枝やら投げつけて遊び出した。

「デアー!デアー!」

って叫びながら。勢いよく投げた石が体にめり込むと、皆大はしゃぎした。

暫くして友人が太い木の枝持って来て

「コレで頭吹っ飛ばしたらボス攻略でボーナス面な」

って言い出して、皆でマネキン前に回りこんで、固まった。

それマネキンじゃなくて首吊り死体だった。死体の重さで枝がしなって体が地面についてて立ってるように見えただけだった。

なんというか上手く言えないんだけど。初めはやっぱり上手く事作ってある人形かなんかだと思った。肌は灰色でごみがいっぱい積もってたし、何か目から黒い汁が垂れたような後があったし。

でも、ビックリして逃げ出すとかしなくて皆

「あ…あれー?」

って雰囲気だった。

暫くしてそれが物凄く臭ってることに気が付いた。映画とかドラマとかで演技してるほど強烈な臭いじゃなくて鶏糞みたいな臭いだった。

で、皆呆然としながらも

「あー、くせーな…」

とか言いながら、ゆっくりもと来た道を戻って先生に

「何かヤバイ」

って報告した。

それからは警察来たり事情聴取されたりキャンプが中止になって学年中の生徒から恨まれたりしたけど。いまだに未だに後悔してるのは、俺の投げた拳大の石が死体の頭にクリーンヒットさせてしまったことだ。

三発も。

あたった時は

「ピコーン!ピコーン」

ってマリオがコイン取ったときの効果音を口で言って、大笑いしてた。

あの時死んでた人、マジでゴメン。
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